旅行業法では、旅行業務を行おうとする場合には、事前に登録行政庁(観光庁長官や都道府県知事)に登録をした後でなければ、その業務を行ってはいけないことになっています。
旅行業の登録は、申請をした後に審査が行われ、登録通知の交付後に登録番号が付与されて、営業保証金を供託した後に供託書の控え等を提出することで、営業を開始することができます。
ただし、実際にはそれ以外にも準備すべき書類などがあるので、それらを漏れなく進めていくことが重要です。
この記事では、旅行業の登録をしてから実際に営業を開始するまでに準備が必要な書類について、解説をしています。
- 旅行業の営業を開始する前に準備が必要な書類
- それぞれの書類についての詳細
旅行業の営業開始前に準備が必要な5つの書類
旅行業法で、登録を受けた旅行会社さんなどが準備をしなければいけない書類が5種類あります。
法律上の義務なので、守れていない場合には罰則を受けたり、行政指導や、場合によっては業務停止・登録の取消にもつながることがあります。
旅行業登録票
旅行業の登録を受けた旅行業者と、旅行業者代理業の登録を受けた旅行業者代理業者は、その営業所に、標識を公衆に見やすいように掲示しなければならないとされています(旅行業法第12条の9)。
この標識のことを、旅行業登録票と呼ぶことがあります。
旅行業登録票は、2つの判断基準を組み合わせることで、4種類に分かれています。
1つ目の判断基準は、旅行業者か旅行業者代理業者か。
旅行業者の使う様式をA様式、旅行業者代理業者の使う様式をB様式とします。
2つ目の判断基準は、営業所で海外旅行を取扱うか、海外旅行は取扱わないか。
海外旅行を取扱う場合をa様式、取扱わない場合をb様式とします。
1つ目と2つ目の基準の組み合わせは、①A-a、②A-b、③B-a、④B-bの4種類になることはお分かりいただけると思います。
2つ目の判断基準については、営業所が複数ある場合には、その営業所ごとに掲示する旅行業登録票を判断します。
たとえば、旅行業の登録を受けている旅行業者のA営業所では海外旅行を取扱い、B営業所では海外旅行を取扱わないとします。
このときに、A営業所は、旅行業者で海外旅行を取扱うので、①A-a様式を掲示します。
B営業所は、海外旅行を取扱わないので、②A-b様式を掲示します。
旅行業登録票のサイズは法令で定められています。
縦35cm以上、横27cm以上です。
旅行業登録票が登録行政庁から交付されることはないので、各会社さんが各自で作成する必要があります。
海外旅行を扱うa様式は下地の色が青、海外旅行を扱わないb様式は下地の色が白となっています。
旅行業登録票については、別の記事でも詳しく解説しております。
旅行業約款
旅行業約款は、旅行会社さんが旅行者と結ぶ旅行業務の取扱いに関する契約について、全ての旅行者に適用される条項をまとめて、いわゆるテンプレート化したものです。
旅行業法上は、旅行会社さんはこの旅行業約款を定めて観光庁長官の認可を受けて、営業所の中の旅行者から見えやすい場所に掲示するか、旅行者が閲覧することができるように設置しなければならないとされています(旅行業法第12条の2)。
旅行業約款は認可制となっていますが、事前に観光庁長官と消費者庁長官が定めた標準旅行業約款を使用することで、旅行業約款の認可を受けたものとして扱われます(旅行業法第12条の3)。
事前に観光庁長官と消費者庁長官が定めた標準旅行業約款であれば、一般消費者である旅行者が極端に不利益になるような条項が含まれることはないことから、このような対応となっています。
ただし、標準旅行業約款を使用する場合でも、営業所での掲示の義務や備え置きの義務は免除されません。
標準旅行業約款には、その契約内容に応じて、①募集型企画旅行契約の部、②受注型企画旅行契約の部、③特別補償規程、④手配旅行契約の部、⑤渡航手続き代行契約の部、⑥旅行相談契約の部と6つのセクションに分かれています。
旅行業務取扱料金表
旅行会社さんは、事業を始める前に、旅行者から受け取る旅行業務の取扱いの料金を定めて、営業所の中の旅行者から見えやすい場所に掲示しなければなりません(旅行業法第12条)。
この掲示する書面のことを、一般的に旅行業務取扱料金表と呼びます。
少し長いので、以下、単に料金表と呼びます。
料金表の記載について、旅行業務のうち企画旅行に関する料金は記載不要です。
旅行業協会が用意している料金表のテンプレートにも、企画旅行に関する金額を記載する部分はありません。
料金表のフォーマットは、旅行業法施行要領という、観光庁が旅行業法の解釈基準を示した通達の中で定められているため、自作せずに旅行業協会などが用意している、この通達の基準に沿ったフォーマットを使うことをオススメします。
企画旅行は組成するツアーに対して企画料金や利益を上乗せして包括表示することが認められています。
一方で、手配旅行等は、旅行会社さんが受け取る旅行業務取扱料金と、宿泊施設や運送機関に支払うべき金額については明確に区分けして金額を表示することになります。
旅行業者代理業者の場合は、所属旅行業者が定めた料金表を、代理業者の営業所において掲示することとされています。
料金表については、以下の記事でも詳しく解説をしています。
旅行業務取扱管理者証
旅行業務取扱管理者は、旅行者から請求があった場合にはその証明書を提示しなければならないとされています(旅行業法第12条の5の2)。
この証明書のことを、旅行業務取扱管理者証と呼んでいます。
書式は定められており、サイズは一般的な名刺とほぼ同じ大きさです。
旅行業務取扱管理者の顔写真を貼付し、会社の印鑑を捺印するようになっています。
書式については、旅行業協会が用意しているものを使用することができます。
余談ですが、営業所外で旅行業務に関する取引を行う場合には外務員証が必要になります(旅行業法第12条の6)。
取引条件説明書面と契約書面
旅行会社さんは、旅行者と旅行業務に関する契約を結ぶ際に、契約の締結前にその取引条件の説明と書面の交付を、契約締結後には契約書面の交付をしなければならないとされています(旅行業法第12条の4、第12条の5)。
取引条件説明書面も契約書面も、記載する内容は旅行業約款と重複している項目もありますが、独自の項目も存在するため、省略することはできません。
どちらの書面についても、複数の書面を組み合わせて、項目がすべて網羅されていれば良いことになっています。
なので、実務的には
①旅行業約款、②旅行条件書、③ツアー等のパンフレット、④契約締結日を証するレシート
のような組み合わせで対処していることが多いです。
営業を開始する前に、特に②の旅行条件書を用意しておく必要があります。
取引条件説明書面と契約書面の詳細については、それぞれ別の記事で解説をしていますのでそちらも併せてご参照ください。
- 旅行業登録票は掲示義務。様式あり。種類と色、サイズに注意!
- 旅行業約款は事前認可制で掲示or備え置き義務。標準旅行業約款なら認可扱い。
- 料金表は掲示義務。企画旅行料金は掲示不要。様式あり。
- 旅行業務取扱管理者証は要求があれば提示義務。様式あり。
- 取引条件説明書面と契約書面は複数書類の組み合わせでOK!
行政書士TLA観光法務オフィスでは、旅行会社さんの開業に向けたコンサルティングサポートも行っております。
旅行業の登録をすると、国や自治体の監督下に置かれて、法律の遵守が求められます。
今回出てきた書類は、法律上義務になっているもので、違反すると行政指導や業務停止命令、さいあくの場合には罰則や旅行業登録の取消対象にもなってしまいます。
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