ひとり社長が旅行会社を開業する方法|旅行業登録手続完全解説

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一度は、自分で旅行業務取扱管理者の資格を取得して、独立して旅行会社の営業を始めたいと思われる方もいらっしゃると思います。
旅行会社で独立開業するためには、会社の設立、旅行業登録のみならず、その周辺知識や事務作業も求められます。
この記事では、そんなひとり社長を目指すあなたのために、会社の設立から旅行業登録、そして営業開始前の準備までを徹底解説しています。
約1万3000文字もある長い記事ですが、役立つ情報を詰め込みましたので、ぜひ参考にしてみてください。

前提条件

ひとり社長として株式会社設立

東京都内で第3種旅行業登録

旅行業協会に加入する

目次

会社設立

事前準備

事前準備の事前準備

会社の設立準備を進める前に、まずは事前準備をします。
もっとも最初に決めるべきことは、株式会社と合同会社どちらにするのか?ということです。
税務上は、どちらにしても同じです。
設立方法でいえば、合同会社の方が少し安く、少し簡単に設立可能です。
認知度でいえば、まだまだ株式会社の方が知名度は高いです。
少し細かいところですが、「代表取締役」の名称を使いたい場合は、株式会社一択です
合同会社の場合は、「代表社員」という肩書を使うことになります。
「ひとり社長」を目指すのであれば、少し費用が掛かるとしても株式会社で設立することをオススメします。

電子申請の準備をする

会社の設立手続は、電子申請による方法が整備されています。
※一部アナログ手続も残っていますが。
そのためには、まず電子証明書を記録したマイナンバーカードと、それを読み取るためのICカードリーダーを用意します。
次に、電子申請を行うために必要な申請用総合ソフト等をパソコンにダウンロードします。

電子申請ではなくアナログ申請をするという方は特に気にしないでOKです。
電子申請にすると、定款の印紙代4万円を節約できるため、チャレンジしてみる価値はあると思います。

なお、マイナンバーカードへの電子証明書の記録方法については、お住いの市役所や区役所に確認をしてください

定款作成に必要な内容を決める

会社運営の絶対ルールである定款を作成するために、必要な情報を書きだします。
「ひとり社長」の会社を作ることを前提にするので、最低限必要な情報は次の通りです。

  • 会社名
  • 本店所在地
  • 事業年度(決算期)
  • 事業目的
  • 資本金
  • 出資者
会社名

会社名は、基本的には自由に決めることができます。
ただし、株式会社を作る場合は必ず「株式会社」という文字を含めなければなりません
会社名に使用できるのは、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、アラビア数字、一部の記号だけです。
登記をする際には「株式会社」は必ず日本語で申請をしなければならないので、「ひとり社長株式会社」を英語で登記する場合、「One President株式会社」とすることはできても、「One President Co.,Ltd.」のように登記することはできません。

本店所在地

本店所在地は、どの住所を登記しても問題ありません。
自宅住所を本店として登記することもありますし、専用の事務所を借りて登記することもあります。
この後の旅行業登録の手続を考えると、事務所を借りてそこを本店所在地として登記をした方が良いです。

事業年度(決算期)

会社は、1年に1回以上決算をしなければいけません
ですので、具体的な事業年度を決定します。
日本の会社の多くは12月末決算や3月末決算が多いですが、自由に決めてOKです。
決算日を月末ではなく、例えば9月17日のようにその月の途中にすることもできます。
事業の繁忙期と被らないようにする、税理士に依頼する場合は1月~6月は避ける、等考え方は様々です。

事業目的

設立する会社の事業目的も、必要です。
旅行業登録をする場合には、必ず「旅行業」又は「旅行業法に基づく旅行業」の記載を入れるようにしてください。
その他、関連する業務や、今後取り組んでいきたい事業を記載します。
銀行取引などではこの事業目的を参考にすることがあるので、あまり広げすぎず、向こう5年くらいで取り組みたい事業内容を記載するとよいでしょう。

資本金

その会社の資本金をどれくらいにするのかを決めます。
旅行業登録時には、この資本金の金額によって、登録要件である基準資産額を満たすかどうかが決まります。
今回のように旅行業協会に加入した上で第3種旅行業登録をする場合には、最低でも360万円の資本金が必要です。
旅行業協会に加入しない場合は、資本金は最低600万円です。

実際の事業運営は、初期のころはこの資本金を元手に顧客との取引や経費精算を行うため、ギリギリではなく少し多めに資本金を用意しましょう。
資本金1000万円以上で設立をすると、初年度から消費税の課税事業者となるため、特別な理由が無ければ、1000万円未満の資本金で設立をした方が、若干おトクです。

出資者

会社の設立にあたって資本金を出資する人のことを発起人と言います。
株式会社の場合、会社が株式を発行して発起人がその株式を取得する対価として支払う費用を資本金として計上します。
今回はひとり会社の設立なので、当然出資者はあなただけになると思います。
場合によっては、家族や知り合いからも出資をしてもらって、その分株式を発行するというやり方もあります。
しかし、株式を自分以外の第三者に持たせると、会社運営上支障を来すことも多いので、仮に知人等から出資をしてもらうとしても、あくまでも個人間の金銭の貸し借り扱いにして、出資そのものはあなた本人が全額出したという形で進めていくのが良いでしょう。

その他事業運営に必要なものを準備する

印鑑

会社名が決まったら、その会社の事業で使用する印鑑を作成しましょう。
作成する印鑑は、3本セットで作成するのが一般的です。
①代表印(実印)、②銀行印、③角印の3種類です。
①と②の印鑑は丸印で作成することが多いです。
①は会社の設立登記申請時に、会社の実印として同時に登録申請をします。
②の銀行印は、銀行の口座開設で使用します。
③の角印は、請求書や領収書のような、日常文書に捺印することが多いです。
ネットショップなどでも作成できるので、ぜひ探してみてください。

事務所の契約

会社の設立登記申請では、本店の所在地を証明する資料は必要ありません。
しかし、旅行業登録の申請時には、今回のケースのような東京都で申請をする場合には契約書も必要になるため、会社の設立時にはしっかりと契約をしておきます。
もし自己所有の自宅を本店&旅行業の営業所として使用する場合は、不要です。

会社の設立前では、賃貸契約の名義は会社名義ではなくあなた本人の個人名義で結ぶことになります。
旅行業登録の申請を会社名義で行う場合、賃貸借契約の名義と旅行業登録申請の名義が一致している必要があるため、この段階で不動産会社やオーナーに対して、会社設立後に名義の書き換えをしてもらう旨、承諾を取っておきましょう
実務的には、個人名義の契約であっても、法人設立後はそのまま法人が使用して問題ない旨の同意書を契約書に綴じこんでおけば対応可能ですが、可能であればきちんと法人名義の賃貸借契約にしてらもらえるよう、先に根回しをしておきましょう。

定款作成

最低限必要な情報がまとまったら、次は定款を作成します。
定款には絶対記載しなければいけない事項と、決定したら記載しなければいけない事項、記載してもしなくても良い事項があります。
定款のひな形はウェブ上でも公開されているのでそれを使用することは可能です。
ひな形を使った定款が不安であったり、専門家の確認を入れたい場合は、行政書士や司法書士といった専門士業に依頼をしてみてください。

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なお、定款はこのあとの認証方式の違いにより、紙の定款と電子定款に分類することができます。
紙の定款は、認証時に紙に印字した定款を作成して、認証をしてもらいます。
電子定款は、認証時に電子定款を公証役場に送付して、電子認証をしてもらいます。
電子定款の作成には、発起人の電子署名が必要になります。
電子署名は、マイナンバーカードに電子証明書を記録して、ICカードリーダーでマイナンバーカードを読み取ることで使用することができるようになります。

定款認証

定款の作成が終わった後は、その定款を認証してもらいます。
合同会社の場合は、この認証作業は発生しません。

どの公証役場に行けばいいのか

定款認証をする公証役場は、本店所在地同じ都道府県内の公証役場であれば、どこに行っても問題ありません。
今回は東京都が本店所在地なので、都内にある公証役場はどこを使ってもOKです。
一般的には、会社の本店所在地から最も近い公証役場にします。
あるいは、あなたのご自宅が東京都内であれば、ご自宅から一番近い公証役場でも良いかもしれません。

定款認証で必要な持ち物

紙の定款認証の場合
  • 発起人の印鑑証明書1部
  • 実印
  • 印刷して製本をした定款3部
  • 実質的支配者となるべき者の申告書
  • 4万円分の収入印紙
  • 定款認証手数料

定款を製本する際は、片面A4サイズで印刷をして、用紙の左側をホチキスで止めます。
そして、市販の製本テープでホチキス止めした部分を覆い、製本します。
製本テープは、A4サイズ用にカットされたものを使うとストレスが少ないです。
製本テープと用紙のつなぎ目に実印で契印をするため、製本テープは紙素材でできた白色のものを使用してください。

電子定款認証の場合
  • 発起人の印鑑証明書
  • 発起人の実印
  • 認証済電子定款を記録する媒体(CD-R等)
  • 定款認証手数料

実質的支配者となるべき者の申告書は、事前に電子署名したものを送付することが可能ですが、認証日当日に紙に印刷したものを提出することでも可能です。

定款認証の流れ

紙の定款認証の場合
  1. 定款と実質的支配者となるべき者の申告書を作成後、公証役場にFaxまたはメールで送付し、確認を受ける
  2. 認証の手続を行う日時を決定する
  3. 指定された持ち物を公証役場に持参し、認証を受ける
  4. 謄本を受け取る
電子定款認証の場合
  1. 定款と実質的支配者となるべき者の申告書を作成後、公証役場にFaxまたはメールで送付し、確認を受ける
  2. 認証の手続を行う日時を決定する
  3. 登記・供託オンライン申請システムから指定公証人にオンライン申請をする
  4. 指定された持ち物を公証役場に持参し、認証を受ける
  5. 認証済の電子定款を記録媒体に入れてもらい、受け取る

その他、電子定款を作成した場合には、テレビ電話を使用した方式での認証手続を行うことも可能です。

定款認証にかかる費用

定款認証をする際にかかる費用については下記のとおりです。

  • 印紙代:4万円(紙の定款認証の場合)
  • 認証手数料:5万円(株式会社のみ)
  • 謄本交付手数料:1~2千円
株式会社 合同会社
紙定款認証 電子定款認証 紙定款認証 電子定款認証
印紙代 ¥40,000- ¥0- ¥40,000- ¥0-
認証手数料 ¥50,000- ¥50,000- ¥0- ¥0-
謄本交付手数料 約¥2,000- 約¥2,000- ¥0- ¥0-

資本金の払込

定款の作成が終わって、設立登記をするまでの間に資本金の払込をします。
今回の、ひとり社長で出資者もひとりのケースでは、発起人であるあなた本人名義の金融機関通帳に資本金以上の金額の預入があればOKです。
定款作成日以降の日付(できれば、定款認証日以降)で、資本金額の預入の履歴が分かるように入出金履歴を付けます。
振込である必要はありません。
金融機関の窓口で、会社設立のためであることを告げて、入出金手続をしてもらいます。

払込が終わったら、通帳の入出金履歴のページと口座情報が分かるページをコピーして、払込を証する書面を作成します
払込を証する書面と通帳のコピーをホチキス止めして製本テープで袋とじにし、袋とじ部分に発起人の実印で契印をします。

通帳が無い口座の場合は、ネットバンキングの画面を印刷する方法で代替することができます。

設立登記

登記手続はどこに行けばいいのか

設立登記をする法務局は、本店所在地を管轄する法務局である必要があります。
東京都新宿区が本店所在地の場合は、東京法務局の新宿出張所がその管轄です。
管轄を調べる際は法務局のウェブサイトをお確かめください。

登記に必要な書類

  • 登記申請書
  • 登記すべき事項
  • 定款
  • 払込を証する書面
  • 就任承諾書
  • 発起人の印鑑証明書
  • 法人の印鑑届書

定款の作成方法や会社の設立方法によってはその他の書類が必要になることもありますが、基本的にはこれらの書類があればOKです。

登記手続の流れ

登記申請についても、電子署名を使用したオンライン申請をすることが可能です。
オンライン申請をする際の手続の流れは、ざっくりと以下の通りです。

  1. 申請書情報と添付書面情報の作成を行う
  2. 電子署名をする
  3. 申請書等のデータを送信する
  4. 印鑑届書を管轄法務局へ郵送する
  5. 申請データの到達、受付、納付のお知らせを確認する
  6. 登録免許税を納付する
  7. 補正が無ければ、手続終了
会社の設立日

会社の設立日は、登記申請をした日で
登記手続が完了した日ではないので、設立日にこだわりがある場合は注意が必要です。

アナログ申請の場合

オンライン申請ではなく、アナログ申請を行う場合には、各種書面を紙媒体で用意します。
申請書には電子署名ではなく個人実印と印鑑届書に登録する法人印を捺印し、窓口へ提出します。

現在、設立登記は申請後速やかに処理することとされているため、早ければ1~2日で登記手続が完了することもあります。
法務局によっては1~2週間程度かかることもあります。

なお、具体的な申請手続については法務局のウェブサイトも併せてご参照ください。
また、会社設立について解説された書籍も沢山出ていますので、1冊くらいは読んでみるのも良いかもしれません

登記手続に係る費用

株式会社 合同会社
登録免許税 ¥150,000- ¥60,000-
登記簿謄本 ¥600-/1通
印鑑証明書 ¥450-/1通

登記完了後

登記申請が終わって、補正も無く無事に完了の通知が来たら、晴れてあなたも今日からひとり社長の仲間入りです。
おめでとうございます。
これから、息つく暇もなく怒涛の事務手続が始まります。

税務署への書類提出

まず、会社の本店所在地を管轄する最寄りの税務署に各種書類の提出を行います。
一般的には下記の4種類を提出しておけばOKです。

  • 法人設立届出書
  • 青色申告の承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書
法人設立届出書

その名の通り、法人を設立したことを税務署に知らせるための書類です。
添付書類として定款のコピーをつけて、設立後2ヶ月以内に提出します。

青色申告の承認申請書

青色申告で法人税の申告を行うために必要な書類です。
税制面でのメリットが大きいので、通常は青色申告で申告をします。
その分、日々の経理処理や帳簿管理が厳格になるため、良く分らなければ税理士に相談してみましょう。
提出期限は、設立後3ヶ月以内です。
3ヶ月以内に事業年度の終了日が来る場合は、事業年度の終了日までに提出します。

給与支払事務所等の開設届出書

従業員を雇っていなくても、法人から取締役へ報酬という形で給与が支払われるため、必ず提出します。
提出期限は、給与支払事務所等を設けてから1ヶ月以内です。
会社の設立をした場合は、設立日=給与支払事務所等を設けた日と思って頂いてOKです。

源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書

給与を支払う際には所得税を源泉徴収して、翌月10日までに納付するルールになっています。
この書類は、その源泉所得税を半年ごと(1月と7月)の年2回に分けて納付すればよいこととする書類です。
給与を支払う人員が常時10人未満の事務所のみが対象となりますが、ひとり社長の会社であれば当然特例の対象となるので、特別な理由が無ければ提出しておきましょう。
書類の提出期限はありませんが、書類を提出した翌月の支払給与から適用されるので、納期の特例を受けられるのは書類を提出した2ヶ月後からということになります。

都道府県税事務所と市町村への書類提出

税務署に提出した書類は国税としての法人税の申告をするための書類です。
日本ではその他、地方税の申告をする必要もあります。
そのために、都道府県税事務所と市町村の法人住民税担当部署に書類を提出します。
都道府県税事務所は、会社の本店所在地を管轄する最寄りの都道府県税事務所に対して法人設立届出書を提出します。
市町村については、特別区(東京23区)で設立した場合は手続不要となっております。
それ以外の市町村では、同じように法人設立届出書を提出します。
提出期限は自治体で異なるため確認が必要ですが、おおむね設立後1~2ヶ月後以内としているところが多いようです。

年金事務所への書類提出

税金関係の手続だけでなく、社会保険関係の手続も必要です。
会社を設立すると、健康保険と厚生年金には必ず加入しなければなりません
従業員のいないひとり社長の会社であっても、です。
以下の書類を設立後5日以内に、事業所(本店所在地)を管轄する年金事務所に提出します。

  • 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 健康保険 被扶養者(異動)届

被扶養者(異動)届は、あなたが扶養するご家族がいらっしゃる場合に提出をします。

雇用保険と労災保険

雇用保険と労災保険については、従業員を雇わなければ必要ありません。
むしろ、ひとり社長だけの場合には加入できません。

銀行口座の開設

法人名義で取引を行うため、銀行口座を用意しましょう。
見栄え等を気にして知名度の高いメガバンクで口座を開設したいと考えるかもしれませんが、メガバンクは審査の厳しい支店が多いです。
開設できないことはないですが、今後銀行から融資を受けたい、といったことを検討する場合は、最初はなるべく地元の信用金庫や地方銀行で口座を開設した方が良いです
また、売上入金用の口座と経費支出用の口座を分けて開設すると、経理業務の負荷が減るためオススメです。

法人用クレジットカードの準備

100%必須という訳ではないですが、会社の経費支払専用のクレジットカードは持っておいた方が良いでしょう。
会社経営は現金が命なので、支払を後ろ倒しにできるクレジットカードは、重宝します。
また、会社経営をするにあたって、可能な限り社長の財布と会社の財布は分けておくべきです。
そのためには、最初から会社名義のクレジットカードを持っておくことをオススメします。

会社設立直後では審査が通りにくいところも多いですが、アメリカン・エキスプレスのビジネス・ゴールド・カードは比較的設立直後でも作りやすいようです。

賃貸借契約書の名義変更

旅行業登録の手続きに備えて、事務所の賃貸借契約書の名義変更をしておきます。
通常、代表者の個人名義で契約をしていることが多いので、法人名義に切り替えます。

電話、FAX回線やインターネット回線の準備

東京都で旅行業登録の手続きをする場合、申請書に電話番号とFAX番号を必ず記載します。
そして、登録通知を受ける日時決定は、FAXで事務所に送付されてきます。
回線工事をするために、申込から2~3週間かかることもありますので、法人設立後、早い段階で手続をしておきます。

また、インターネット回線も準備をしておきます。
回線の安定性や強さを考えると、ポケットWi-Fiより、回線事業者と契約をして回線工事をしてもらった方が良いでしょう。

オフィス什器の手配

事業を行っていくためには、オフィス什器の導入も必要です。
パソコンやプリンター、接客用の机やいす、書類保管用のキャビネット等、それぞれの事業に合わせて必要なものを揃えます。

顧問税理士

顧問税理士は、必ずしも必要ではありません。
毎月の経費の仕訳も、決算後の税務申告も、頑張れば自分でできないことはないです。
できないことはないですが、そこまで自分で勉強してやるかやらないか、という経営判断です。
もちろん、会社の数字を理解するために自分で経費入力をすることは大事でしょう。
しかし、自分で入力するにしても、常に質問をすることができる専門家とつながっておくことは、重要です。
税理士事務所が記帳代行をせず、会社側で経費入力することを「自計化」と言いますが、自計化支援をしてくれる税理士事務所もあります。
きちんと報酬を支払えば、その分だけ手厚く対応してもらえますので、ぜひ検討してみてください。
また、アルバイトや社員を雇用する方針にするのであれば、社会保険労務士に労務や年金関係の手続をお願いすることも検討してみましょう。

もしご自身で経理処理や法人税の申告書類作成をしてみたいという方のために、参考書籍をご案内しますので、試しに目を通されてみるとよいかもしれません。
読んでも良く分らなければ、まずは税理士事務所に顧問をお願いした方が良いでしょう。

旅行業協会加入

会社の設立やその後の手続がある程度終わったら、いよいよ旅行業登録に向けた準備を進めていきます。
旅行業協会に加入する場合は、都道府県への申請の前に、協会への入会申し込みを行います。
ANTAとJATAで多少手続やスピード感が異なるので、その違いを理解した上でどちらにするか決めましょう。

ANTAに入会する場合

ANTA入会までの流れ

ANTAは47都道府県にそれぞれ支部があるため、その支部によって若干手続きは異なります。
今回は、ANTAの東京都支部に入会する場合の流れを解説しますが、おおむね他の道府県支部であっても大きく変わることはないです。

  1. 書類提出締切日までに入会申込書類をANTAへ提出する
  2. ANTAから入会審査日のお知らせを受取
  3. ANTAにて入会審査日に面接を受ける
  4. ANTAから入会承認書を受取
  5. 都道府県での旅行業登録
  6. 入会金、会費、弁済業務保証金分担金をANTAへ納付する
  7. 旅行業登録通知と旅行業登録簿をANTAへ提出

2名の推薦人

ANTAに入会する場合は、既にANTAに入会して正会員となっている2名の事業者から推薦をもらう必要があります。
東京都の場合は、ANTA東京都支部への申込とは別に東京都旅行業協会に入会申し込みをすることで、ANTA東京都支部への入会申込に必要な、ANTA東京都支部正会員2名の推薦が無くても申し込みをすることができます。
他の道府県支部では必ず推薦を必要とするところもありますので、ご注意ください。

入会審査

ANTAは、入会審査を常に行っている訳ではありません。
各支部の理事会が行われるタイミングで、面接・入会審査等が行われます
理事会は、おおむね2ヶ月に1回程度の割合で開催されていますが、必ず2ヶ月1度という訳でもありません。
ANTAに入会したい場合は、この理事会が行われる日程の前に書類提出の締切日が設定されているので、この日程に合わせる必要があります。
仮に、既に締切日を過ぎた直後だとすると、次に書類提出をすることができるのは約2ヶ月後ということになります。

ですので、旅行業登録を急いで行いたい場合は、協会に加入しないで手続を進めるか、JATAへの入会を検討しましょう。

ANTAへの入会費用

ANTA東京都支部 東京都旅行業協会
入会金 ¥550,000- ¥100,000-
年会費 ¥61,000- ¥20,000-

JATAに入会する場合

JATA入会までの流れ

JATAにはANTAと違い、申請書類は全て東京都にある事務局に提出して、書面審査等が行われます。
書面審査で不明点がある場合、ヒアリングによる調査が行われます。

  1. 入会申請書類をJATAへ提出する
  2. JATAにて入会申請書類審査
  3. 必要に応じで、入会に関するヒアリング
  4. JATAから入会確認書の受取
  5. 都道府県での旅行業登録
  6. 旅行業登録通知と旅行業登録簿をJATAへ提出
  7. 入会金、会費、弁済業務保証金分担金をJATAへ納付
  8. 弁済業務保証金分担金納付書をJATAへ提出
  9. JATA理事会にて入会審議
  10. JATAから入会承認通知の受取

推薦人

JATAもかつてはANTAと同じように、入会申請に際して推薦人が必要でした、現在では推薦人は不要です

入会審査

JATAはANTAと違い、随時書類を受け付けており、受け付け次第審査が行われます
書類提出から審査が終わるまで、1~2週間程度です
したがって、スピード重視の場合はJATAへの加入をオススメいたします。

JATAへの入会費用

JATA
入会金 ¥800,000-
年会費 ¥350,000-
特別会費 ¥600-/1人あたり

旅行業登録手続

いよいよ、旅行業登録の手続です。
実は、東京都への申請書類には、旅行業協会に提出した書類が多く含まれています。
その他、東京都への申請は事前予約制になっているため、必ずスケジュール設定をしてから申請に行くようにしてください。

旅行業登録申請の流れ

  1. 事前に申請日の予約を入れる(月・水・金のみ)
  2. 予約日に都庁へ行き、書類を提出する
  3. 不備が無ければ受付となり、書類審査が行われる
  4. 補正が無ければ事務所宛に登録通知予定日のFAXが東京都から送付される
  5. 登録通知予定日に都庁へ行き、登録通知書やその他書類を受領し、登録手数料を支払う
  6. 弁済業務保証金分担金を旅行業協会に納付する(協会非加入の場合は、法務局に営業保証金を供託する)
  7. 弁済業務保証金分担金納付書(供託書)の写しと納付済届出書を東京都に提出する

旅行業登録申請に必要な書類

  • 新規登録申請書
  • 定款の写し
  • 法人の履歴事項全部証明書
  • 役員の登録拒否事由に該当していない宣誓書
  • 旅行業務に関する事業計画
  • 旅行業務に関する組織概要
  • 直近の確定申告書・貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・勘定科目内訳明細書の写し
    ⇒設立後間もない法人は、設立時の貸借対照表を作成し、提出
  • 旅行業務取扱管理者選任一覧表
  • 旅行業務取扱管理者の合格証の写し
  • 定期研修修了証の写し
    ⇒未受講の場合、登録後に研修を受け、速やかに修了証を提出する旨の誓約書
  • 旅行業務取扱管理者の履歴書
  • 旅行業務取扱管理者の登録拒否事由に該当していない宣誓書
  • 営業所の使用権を証する書類
  • 自己処理体制の説明書
  • 標準旅行業約款

営業開始前準備

旅行業登録まで無事完了しましたが、営業開始までもう少しです。
まだやることがあるのか~、と思われるかもしれませんが、まだやることがあるのです
旅行業法上必要なことと、それ以外に考えなければいけないことがあります。

旅行業法上準備が必要なもの

掲示物

  • 標準旅行業約款の掲示または備え置き
  • 旅行業登録票の掲示
  • 旅行業務取扱料金表の掲示
旅行業約款

標準旅行業約款は、営業所の旅行者にとって見やすい場所に掲示か備え置きをします。
東京都の場合、旅行業登録申請時に標準旅行業約款を2部提出して、1部は備え置き用として返却をされるため、そのまま使用することでもOKです。

旅行業登録票

旅行業登録票は、営業所の公衆に見やすい場所に掲示する義務があります。
また、サイズや記載事項、色が決められており、この様式に従って自作する必要があります。

旅行業務取扱料金表

旅行会社が旅行者から受け取る旅行業務の取扱料金を事業開始前に定めて、営業所の旅行者に見やすい場所に掲示する必要があります。
旅行業務取扱料金は、企画旅行以外の旅行業務について定めればよいので、企画旅行の企画料金については掲示する必要はありません。

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書面作成

  • 旅行業務取扱管理者証、外務員証の作成
  • 取引条件説明書面と契約書面の作成
  • 事業年度終了後の取引額報告書
事業年度終了後の取引額報告書

事業年度終了後100日以内に、その一年間の旅行者との取引額を登録行政庁と所属旅行業協会に報告しなければいけません。
100日以内に行う報告なので、100日報告と言ったりもします。
この報告書に記載された取引額を見て、翌事業年度の営業保証金額が決まります。
取引額報告書を提出しない場合、5年に一度の更新時に書類を受け付けてもらえないので必ず毎年提出してください。
また、報告書の未提出は、30万円以下の罰金処分の対象となり、罰金処分を受けると旅行業登録の取消事由に該当することになりますので、いずれにせよ必ず期限内に出すようにしてください。

その他営業上必要になるもの

創業融資

日本政策金融公庫や、自治体による創業融資制度は、積極的に活用しましょう。
通常の金融機関は、実績のない新規会社に対しては積極的に融資をしてくれません。
事業運営には現金はつきものです。
創業当初は、一般的には売上は不安定ですし、仮に融資を受けて使わなかったとしても、保険として現金をストックしておくと、心にゆとりのある会社経営をすることができます
日本政策金融公庫で創業融資を受けて、信用金庫等の口座から返済を続けることで、会社に信用力が生まれて、将来信用金庫等の金融機関からも融資を受けやすくなります

カードローンやビジネスローンに比べて、金融機関の融資で支払う利息はとても低く設定されています。
創業時にしか利用できない創業融資は、ぜひ検討してみてください。

名刺、販促ツールの作成

営業活動を行う上で、名刺や会社案内等の販促ツールはぜひ作りましょう。
その際、旅行会社としてきちんと行政の登録を受けていること示すために、旅行業の登録番号を入れても良いかもしれません。
また、旅行業協会に入会すれば、その所属会員であることを示すためロゴマークを入れることも重要です。

名刺や会社案内は、自社が相手にどのように認識されるかを考えながら作ると良いです。
例えば、
研修旅行に強い会社です!
よりも
従業員○○名様の◇◇を目的とした研修旅行はお任せください。研修の効果を最大化するお手伝いをいたします!
のコピーの方が、相談してみよういう気持ちになるはずです。
前者と後者のどちらがより印象に残るか、そういったことを考えてツールを作ってみましょう。

ウェブサイト

ウェブ経由で集客をしないとしても、会社案内代わりのウェブサイトはしっかりと作りましょう。
今の時代はWordPress等を使うことで、自作でもかなりキレイに仕上げることができます。

また、ウェブサイト経由で旅行の申し込みを受け付けるような場合には、旅行業協会が作成したガイドラインに沿って、ウェブ画面を構築していく必要があります。
また、取引条件説明書面や契約書面を電子的に交付する場合には、法律上決められた項目が抜けモレ無く網羅されているかどうかの確認も必要です。

キャッシュレス決済の導入

店頭決済をするにしろ、ウェブ決済をするにしろ、顧客利便性を考えるとキャッシュレス決済の導入は検討した方が良いです。
クレジットカード、QRコード決済等選択肢は豊富です。
手数料率も重要ですが、入金サイクルがどれくらいで行われるかも重要です。
当たり前ですが、決済後入金されるまでのサイクルができるだけ短い方が、事業運営にとっては良いです。

旅行業務システムの導入

旅行業務システムについては、自社の業務フローを洗い出して、カスタムメイド方式で依頼をするのがいいのか、それともパッケージ型でクラウド方式のものが良いのか等、検討が必要です。
様々な事業者からのシステムが出ているので、色々デモンストレーションをしてもらい、確かめるのが良いでしょう。
旅行業務システムを導入する目的は業務の効率化なので、システムを入れる必要性が無ければ無理に入れる必要はありません。

旅行損害保険

旅行損害保険も、どのようにするのか検討しておきましょう。
自社で損害保険代理店になるということもありますし、別の代理店と提携するというのもあります。
損害保険代理店になると、販売ノルマ等も発生してくるので、取引数が増えないうちは提携先を見つける方が良いかもしれません。

個別認可約款の申請をする際には、保険取扱いがポイントになってくるので、忘れずに検討しておきましょう。


長々とお付き合いくださりありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。
旅行会社を始めるまででもやるべき作業、考えるべきことは多岐にわたりますが、実際に事業運営を始めていくともっとやるべき作業は増えていきます。
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