事業者を相手方とする受注型企画旅行契約約款の認可申請について

受注型企画旅行契約BtoB約款の認可申請について
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旅行実務の現場では、旅行に関する契約は必ずしも、旅行者と直接結ぶものばかりではありません。
たとえば企業が実施する招待旅行や報奨旅行のように、旅行者以外の事業者が旅行の内容を決定して、代金を負担して実施するようなものも見受けられます。
しかしながら、標準旅行業約款ではあくまでも、旅行者と旅行会社が直接契約することを想定したものとなっており、前掲のような事業者が旅行者に代わって旅行内容を決定し、旅行代金を負担するような場合に、旅行者との契約関係を明確に説明することができず、十分な対応ができないことがあります。
また、特殊な条件での手配では、宿泊施設や運送機関から請求される取消料・違約料等をカバーできないという問題もあります。

こうした点を解決するために、事業者を相手方とする受注型企画旅行契約について、個別の約款規定を設けて、実態に即したものとなるように、認可を受けることができるようになっています。

この記事では、この事業者を相手方とする受注型企画旅行契約約款(受注型BtoB約款)の内容と適用条件、具体的な手続方法について解説しています。

この記事はこんな方にオススメです

  • 事業者から報奨旅行や招待旅行の企画依頼を受ける旅行会社さん
  • その他団体や個人事業主からの企画依頼を受ける旅行会社さん

目次

受注型BtoB約款で変わること

約款の適用対象となる契約の相手方

標準旅行業約款の受注型企画旅行契約の部、第1条(適用範囲)には、「当社が旅行者との間で締結する受注型企画旅行に関する契約…は、この約款の定めるところによります」と定められています。
これは、旅行者と旅行会社が契約をする際に、約款の適用を受けるという意味です。

他方で、受注型BtoB約款の第1条(適用範囲)では、「当社が事業者との間で締結する受注型企画旅行に関する契約…は、この約款の定めるところによります」となっています。
このように、約款の適用を受ける契約の相手方が旅行者ではなく事業者となっています。

事業者とは、受注型BtoB約款第2条第5項で次のように定められています。

①法人その他の団体
②事業として、または事業のために契約の当事者となる場合の個人

法人

法人には、いわゆる株式会社や合同会社、一般社団法人やNPO法人のようなもののほかに、国、都道府県、市町村といった公法人も含まれます。

その他の団体

民法上の組合や、法人としての手続が行われていない権利能力なき社団・財団が該当します。

事業としてまたは事業のために契約当事者となる個人

個人事業主が、事業活動のために旅行契約を締結する場合が該当することになります。
たとえば、不動産業を営む個人事業主が、自らが販売する物件の販売を目的として、バスを利用した下見旅行を実施するようなケースが考えられます。

旅行条件の取り決めをする相手方

受注型BtoB約款が適用される契約では、事業者が契約相手となり、実際に旅行に参加する旅行者と契約主とが異なるケースが多いと思います。
この場合、実際の旅行内容を決めたり、旅行内容を変更するといった、旅行会社が旅行条件の取り決めをする相手となるのは、個別に旅行に参加する旅行者ではなく、契約相手である事業者となります。

旅行者は、あくまで旅行会社と事業者の間の旅行契約の範囲内で旅行サービスの提供を受けることができます。

取消料の額の特約

受注型BtoB約款には独自の取消料規定は設定されておらず、通常の旅行業約款受注型企画旅行契約の部に定めてられている、取消料表の範囲内で取消料を回収することができるのが原則です。

しかし、旅行会社と事業者の間で特約を結ぶことで、取消料表の範囲に関係なく、事業者と取消料の金額を設定することが可能です。
通常、旅行者にとって不利な特約を結ぶことはできないので、この点は受注型BtoB約款の一番大きな特徴と言えます。

BtoB約款を適用できる条件

事業者が相手の契約

受注型BtoB約款の適用を受けるためには、契約の相手方が事業者であるといえる必要があります。
事業者とは、先ほど確認したとおり、法人、その他の団体、個人事業主です。

たとえば、企業が福利厚生の一環として自社の社員を対象に、企業が費用を負担して行う職場旅行や、企業がその業務として自社の役員・社員を参加者として行う会議・研修旅行は受注型BtoB約款に該当する典型的な契約例です。

一方で、企業の従業員が職場の親睦を深めるために企画した職場旅行や、大学のサークルの構成員が各自で参加費用を負担して実施する合宿旅行などは、それぞれの団体が権利能力なき社団としての条件を満たしていないようなときには、受注型BtoB約款の対象範囲とはならず、通常の受注型企画旅行として処理することになります。

受注型BtoB約款の運用上の注意点

オーガナイザーの介入

オーガナイザーが優待主や招待主を装いながら、実際には旅行者が旅行代金を負担して、実質的にオーガナイザーが旅行を募集して実施している場合には、このオーガナイザーは旅行業上の無登録営業(旅行業違反)ということになります。
このような法律に反する人に対して旅行会社が協力をすると、その旅行会社も無登録営業に関与したとして、処分の対象となることがあります。

したがって、契約相手がこのようなオーガナイザーに該当していないかどうかについてはよく見極める必要があります。

旅行者の同意が必要なもの

受注型BtoB約款の適用を受ける契約は、事業者がその主体になるものですが、事業者の一存では決められず旅行者の同意などが必要になるものがあります。

旅行内容の変更

旅行への参加が確定している旅行者がいる場合は、旅行内容の変更について、その旅行者の同意が必要とされています。

実際の運用としては、旅行の申込みをする際に、事業者から参加者に対して、旅行の参加条件などを記した参加要領を渡してもらい、その参加要領の中に旅行内容を変更する可能性があること、それを予め承諾の上旅行に参加するよう記載して、知らせておく必要があります。

旅行者の交替

旅行者の交替をする場合、交替前の旅行者の承諾が必要されています。
旅行者の交替について、旅行会社と事業者の間でどのように取り扱うのかは事前に協議をしておき、旅行者には参加要領でお知らせをして、予め承諾を取り付けておく必要があります。

事業者による旅行契約の解除

事業者が任意で旅行契約を解除(解約)する場合、旅行者の同意が必要とされています。
このようなときにも、参加要領に旅行を中止することがある旨を記載して、旅行者に知らせた上で、予め旅行者の承諾を取り付けておきます。

個人情報の取扱い

旅行者が旅行の申込みをする際に事業者に対して提出する個人情報については、旅行サービスの提供をするために、事業者が旅行会社に、また、旅行会社が運送・宿泊事業者等に提供することを参加要領に記載し、旅行者に知らせた上で、予め旅行者の承諾を取り付けておくようにします。

取消料の特約が無効になるケース

受注型BtoB約款の取消料に関する規定は受注型企画旅行契約の部の取消料に関する規定がそのまま適用されますが、事業者との特約で、その取消料に関する規定の範囲を超えた金額の取消料を徴収することが可能となっています。

しかし、事業者が旅行者に対して取消料の全部や一部を負担させるような場合には、旅行者が負担する取消料は、旅行者のために催行する旅行に関する旅行代金を基準として、本来の取消料の規定の範囲内で旅行者に対して取消料を負担させる必要があります。
本来の範囲を超えて取消料を旅行者に負担させる場合は、旅行会社と事業者との間で定めて取消料に関する特約が無効となります。

特別補償規程による補償金等と変更補償金

特別補償規程による補償金等

受注型BtoB約款でも、他の旅行契約と同じように、特別補償規程の適用があります。
特別補償規程に基づく死亡補償金や入院見舞金などの補償金等は、旅行者からの請求に基づいて、旅行者に直接支払う必要があります。

変更補償金

受注型BtoB約款には、独自の変更補償金に関する設定はされていませんが、受注型企画旅行契約の部の変更補償金に関する規定がそのまま適用されることになっています。
旅程が変更になった際の変更補償金は、旅行者ではなく事業者に対して支払われることとなります。

なお、旅程保証約款の個別認可を受けて、受注型企画旅行契約の部の変更補償金に関する規定の内容が変更となっている場合には、個別認可を受けた後の変更補償金に関する規定が受注型BtoB約款にも適用されることとなります。

認可申請に必要な書類

受注型BtoB約款の認可申請に必要な書類は、以下の2点です。

①旅行業約款変更認可申請書
②事業者を相手方とする受注型企画旅行契約の部(JATA・ANTAモデル約款)

受注型BtoB約款は、標準旅行業約款のうち、受注型企画旅行契約の部と特別補償規程の間に新しい契約の部を設ける形となるため、他の旅行業約款の認可申請で必要となる新旧対照表は必要されていません。

旅行業約款認可申請の手続の流れ

申請先

旅行業約款の変更認可申請先は、第1種旅行業者は主たる営業所を管轄する地方運輸局です。
第2種旅行業者、第3種旅行業者、地域限定旅行業者は各都道府県に申請します。

申請から認可までの流れ

STEP
書類の作成
STEP
申請先へ書類の提出
STEP
書類審査(標準処理期間:60日間)
STEP
約款の認可
STEP
認可約款の運用開始(旅行商品の販売)

旅行業約款の認可申請の標準的な処理期間は60日となっています。
しかし、受注型BtoB約款は事前に認可を受けることができるとして調整が行われている、定型的個別認可約款なので、早ければ2~3週間程度で認可されることもあります。

注意事項

約款が認可された後は、認可後の約款を営業所に掲示or備え置きしておかなければなりません。
受注型BtoBの認可約款は、旅行業約款の受注型企画旅行契約の部と特別補償規程の間に、「事業者を相手方とする受注型企画旅行契約の部」を新しく挿入する形となります。


旅行業に関するお手続・事業の運営で、気になっていることはございませんか?

行政書士TLA観光法務オフィスでは、旅行業約款の個別認可申請のサポートをしております。
受注型BtoB約款の認可申請自体は、難しいものでもないので旅行会社さんが自社で対応することも可能です。
ただ、実際には導入後の運用でご不安に思われたり、気になるところが出てくる、というケースが多いようです。

当時所では、約款の認可申請だけでなく、そうした実際の事業活動をする中で出てきた約款運用上の疑問点や気になる点についても、ご相談に乗ることが可能です。
たとえば、ご旅行条件書等の見直しをしたい、といったことにも対応しています。

自社でも頑張ればできる内容ですが、もしご不安に思われたり気になることがございましたら、下記お問い合わせフォームよりご相談いただければ幸いです。。
あなたからのご連絡をお待ちしております。

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