PEX運賃は航空会社が定めた正規割引運賃で、発券時期が早いほど割引率が高いことが多く、旅行者にとっては旅行代金が安くなるお得な制度です。
一方で、早い段階から取消料がかかることが多く、旅行会社がPEX運賃適用となる航空券を取扱う場合、旅行業約款に定める取消料の規定では、旅行会社が航空会社に支払う取消料をカバーできないということが起こりえます。
受注型企画旅行であれば、実額精算による取消料設定を行うことができる旅行業約款の認可を受けることで対応可能ですが、その約款では募集型企画旅行については対象外です。
そこで、新たに募集型企画旅行についても、旅行業約款の認可を受けることで、PEX運賃の航空券を募集型企画旅行に取り込む場合であっても、取消料を回収することができるようになります。
PEX運賃の航空券を募集型企画旅行に組み込む旅行会社
PEX運賃等の取消料・違約料を反映した取消料を設定することができる旅行業約款で変わること
約款の個別認可を受けることで、募集型企画旅行にPEX運賃の航空機を取り込んだ場合の取消料について、航空会社によって設定されるPEX運賃航空機の取消料と、旅行業約款上の取消料を選択して、お客様に提示することが可能になります。
具体的には、国内募集と海外募集についてそれぞれ以下の表のようになります。
募集型企画旅行契約の取消料
国内募集型企画旅行
旅行契約解除の時期 | 取消料額 | |
---|---|---|
航空会社がウェブサイト等により広く消費者向けに販売する航空券と同一の取引条件による航空券を利用する募集型企画旅行契約であって、契約書面において、当該航空券が利用されること、航空会社の名称並びに当該航空券に関して航空会社が定める取消手数料、違約料、払戻手数料その他の航空運送契約の解除に要する費用(航空券取消料等)の条件(航空券取消条件)及び金額を明示したもの(貸切船舶を利用した募集型企画旅行契約を除く。) | ||
旅行契約締結後(以下の場合は除く。) | 旅行契約解除時の航空券取消条件を適用した場合の航空券取消料等の額(旅行契約解除時の航空券取消料等)以内 | |
旅行開始日の | 21日前(日帰り旅行の場合は11日前)~9日前 | 旅行代金の20%と旅行契約解除時の 航空券取消料等のどちらか大きい金額以内 |
8日~2日前 | 旅行代金の30%と旅行契約解除時の 航空券取消料等のどちらか大きい金額以内 |
|
前日 | 旅行代金の40%と旅行契約解除時の 航空券取消料等のどちらか大きい金額以内 |
|
当日 (以下の場合は除く。) |
旅行代金の50%と旅行契約解除時の 航空券取消料等のどちらか大きい金額以内 |
|
旅行開始後の解除又は無連絡不参加 | 旅行代金の100%以内 |
なお、航空券に関して、旅行会社が航空会社に支払う航空券取消料等が発生しなかった場合は、旅行契約解除時の航空券取消料等は無料として取扱います。
また、航空券取消料等が航空会社によって減額された場合は、その減額後の金額を旅行契約解除時の航空券取消料等として取扱います。
海外募集型企画旅行
旅行契約解除の時期 | 取消料額 | |
---|---|---|
日本からの出国時又は日本への帰国時に、航空会社がウェブサイト等により広く消費者向けに販売する航空券と同一の取引条件による航空券を利用する募集型企画旅行契約であって、契約書面において、当該航空券が利用されること、航空会社の名称並びに航空券取消条件及び航空券取消料等の金額を明示したもの(貸切船舶を利用した募集型企画旅行契約を除く。) | ||
旅行契約締結後(以下の場合は除く。) | 旅行契約解除時の航空券取消料等の額以内 | |
旅行開始日がピーク時の旅行の場合で 旅行開始日の41日前~32日前 |
旅行代金の10%と旅行契約解除時の 航空券取消料等のどちらか大きい金額以内 |
|
旅行開始日の | 31日~3日前 | 旅行代金の20%と旅行契約解除時の 航空券取消料等のどちらか大きい金額以内 |
2日前~当日 (以下の場合は除く。) |
旅行代金の50%と旅行契約解除時の 航空券取消料等のどちらか大きい金額以内 |
|
旅行開始後の解除又は無連絡不参加 | 旅行代金の100%以内 |
国内旅行と同じように、旅行会社が航空会社に支払う航空券取消料等に変動(減額や発生しない)があれば、その変動後の金額に従うことになります。
認可申請に必要な書類
- 旅行業約款変更認可申請書
- 旅行業約款(案)
- 旅行業約款変更対照表
- 宣誓書
- 「海外旅行保険(旅行変更費用担保特約)」に関する資料
※第1種旅行業者のみ必要 - 損害保険代理店委託契約書の写し
- 海外旅行保険のパンフレットと申込書
第1種旅行業者で、損害保険代理店契約書の中に取扱いを委託されている保険種類が記載されておらず、別途通知されることになっている場合には、その通知書も添付する必要があります。
旅行業約款認可申請の流れ
申請先
旅行業約款の変更認可申請先は、第1種旅行業者は主たる営業所を管轄する地方運輸局です。
第2種旅行業者、第3種旅行業者、地域限定旅行業者は各都道府県に申請します。
申請から認可までの流れ
書類の作成と保険契約の準備
申請先へ書類申請
審査処理(標準処理期間:60日)
認可
認可約款の適用開始(旅行商品の販売)
旅行業約款の認可申請は、標準的な処理期間は60日となっております。
しかし、この募集型PEX運賃約款は事前に調整が行われた定型的個別認可約款であるため、早ければ2週間程度で認可されることもあります。
留意事項
約款の掲示・備え置き
約款が認可された後は、認可後の約款を営業所に掲示or備え置きしておかなければなりません。
旅行業協会等では対応したひな形を作成していないので、自社で作成する必要があります。
取引条件説明書面への記載
旅行会社は、取消料条件について取引条件説明書面に記載する事項が増えます。
- PEX運賃等を利用する旨
- 航空会社名及び利用する運賃の種別
- 航空会社がPEX運賃等の航空券について定める取消手数料・払戻手数料等の運送契約の解除に要する費用の合計額
- 航空券取消料等の合計額が標準旅行業約款に規定する取消料の額を超えるときは、当該航空券取消料の合計額の範囲内の金額を取消料の額とする旨
- 旅行者が航空会社の航空券取消条件を確認する方法
- 海外旅行保険への加入を勧める旨
旅行者からの問い合わせ
旅行契約を解除する際に、PEX運賃による取消料規定が適用になる場合、旅行者は発券した航空券の種別等について旅行会社に照会をかけることができます。
その場合は、航空券のe-チケット控え等を入手して、旅行者に提示する等しなければなりません。
PEX運賃の意味
この約款でいうPEX運賃とは、航空会社がそのウェブサイト等で一般消費者向けに広く販売している航空券のことを言います。
航空会社と旅行会社との間で設定されるIT運賃等の、一般消費者向けに広く販売されていない航空券は対象外となります。
行政書士TLA観光法務オフィスでは、旅行業約款の個別認可申請のサポートをしております。
約款の認可申請はもちろん、必要に応じて企画書面や契約書面等の見直しにも対応しています。
自社でも頑張ればできる内容ですが、もしご不安に思われたりサポートを受けてみたいと思って頂けましたら、お問い合わせフォームよりご相談くださいませ。
あなたからのご連絡をお待ちしております。