旅行業登録に必要な条件を徹底解説

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旅行業の登録をするためには様々な条件を、1つずつクリアしていく必要があります。
登録行政庁によって審査対象とするかどうかは変わってきますが、事業を行っていく上で重要な考え方が含まれています。
この記事では、旅行業登録をする上で必要な条件を細かく分析していきます。

こんな方にオススメ

これから旅行業登録をしようと考えている

役所の資料ではイマイチ必要な条件が分からなかった

目次

個人か法人か

個人でも法人でもOK

個人事業主として旅行業の登録をするか、株式会社等の法人を設立してからにするか、迷われる方もいらっしゃるかと思います。
まず、旅行業の登録自体は個人であっても法人であっても問題ありません
審査上、どちらが有利でどちらが不利になるということもありません。
個人で登録するか、法人で登録するかはそれぞれの考え方で良いと思います。
事業を拡大していく予定ならば、法人を設立してから旅行業登録をした方が良いでしょう。
逆に、年間の利益が数百万程度であれば、個人のままでも良いかもしれません。

株式会社以外でも旅行業登録は可能

ひとくちに法人といっても、株式会社だけでなく、合同会社や一般社団法人、事業協同組合等、その種類は様々です。
旅行業の登録は、旅行業法上は登録することができる法人格についての縛りはありません
NPO法人であっても、公益財団法人であっても、登録要件さえ満たすことができれば登録は可能です。
仮に非営利法人で旅行業登録をする場合、旅行事業の営業は営利事業に該当することになりますので、その点は注意が必要です。

法人成りしても旅行業は引き継げない

仮に個人で旅行業登録をしたとして、その後事業が順調に伸びていき、節税等も検討して法人化したいという方は要注意です。
旅行業登録は、個人から法人成りしたとしても引き継ぐことはできません
この場合、法人で新規として旅行業登録をし、個人の登録を廃止するという手続が必要です。

例外的に旅行業の登録を引き継ぐことができるのは、個人の相続の場合です。

名称/商号

会社法上の制限

旅行業法上は、個人の屋号や会社名についての制限はありません。
しかし、会社法上で一定の制限があるため、屋号や会社名をつけるときには注意が必要です。
具体的には、個人事業主の場合、その屋号に「会社」であると誤認される文字は使用できません
法人の場合は、株式会社なら株式会社、合同会社なら合同会社と、その種類に従った名前を法人名に組み込まなければいけません
また、異なる種類の会社であると誤認されるような文字は使用できません
さらに、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるような文字や商号は使用できません
例えば、取引相手が勘違いするだろうと思って「JTB」や「HIS」のような、誰もが知っている企業の名前を使用してはいけないという趣旨です。

商標による制限

その他、他社が商標登録している文言を屋号や会社名にすることも、可能な限り避けた方が良いです。
商標権が問題になるのは「商標的利用」なので、サービスや商品名として使用したときに問題になります。
単純に、商標として登録された文言を会社名にするだけでは問題は起きません。
しかし、社名をサービス名や商品名とするような場合には、当然その名称は商標登録されており、サービス名や商品名としては使用できなくなってしまうので、事前に調査が必要です。

なお、旅行業の登録申請時に類似商号が既に旅行業として登録されていないか、調査を行う登録行政庁もありますので、詳細は各申請先に確認することをオススメいたします。

事業目的

一般的に、旅行業登録の申請をする際には、法人であればその事業目的に「旅行業」または「旅行業法に基づく旅行業」の文言が入っていることを条件としている登録行政庁がほとんどです。
これは、法律上の根拠があるものではありませんが、実務的にはこれに従わないと手続が進められないところも多いです。

事業目的の変更には登記申請が必要なため、一定の登録免許税の支払いが発生します。
お金がかかることなので、「法律に書いてないならいいじゃないか」と思われることもあるかもしれませんが、法人の事業目的は、一般的にはその法人がどんな事業を行っているのか、判断するための材料となります。
たとえば銀行の口座開設や融資審査などでも影響が出てくる部分ですので、素直に追加した方が良いでしょう。

なお、旅行業登録の申請時に事業目的に入っていない場合でも、後から事業目的に文言を追加した状態の登記簿謄本を出す旨の誓約書を提出することで対応してくれる登録行政庁もあります。

基準資産額

旅行業の登録種別ごとに、基準資産額が設定されています。
これは、申請者が、現金化可能な資産をどれくらい所有しているのか、ということについて条件を定めたものです。

登録種別 基準資産額
第1種旅行業 3000万円
第2種旅行業 700万円
第3種旅行業 300万円
地域限定旅行業 100万円

この基準資産額を満たしていないと、旅行業登録をすることができないので注意が必要です。
特に新しく法人を立ち上げる際は、資本金の設定金額を間違えると登録ができないということになってしまうので、お気を付けください。
基準資産額の具体的な計算方法については別の記事で解説しています。

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営業保証金/弁済業務保証金分担金

旅行業の登録種別ごとに営業保証金額が定められています。
これは、一定金額ではなく、毎年の取引額等によって変わる可能性があります。
営業保証金は、法務局に供託という形で納付をします。

また、旅行業の営業保証金には弁済業務保証金分担金という制度があります。
これは、旅行業協会に加入することで、本来供託すべき営業保証金の5分の1の金額を旅行業者が負担すれば、残りの部分については旅行業協会が代わりに供託をするという制度です。

営業保証金額が圧縮できるので、スタートアップ時に出費を抑えたい場合には有効です。

登録種別 営業保証金(弁済業務保証金分担金)
第1種旅行業 7000万円(1400万円)
第2種旅行業 1100万円(220万円)
第3種旅行業 300万円(60万円)
地域限定旅行業 15万円(15万円)
※営業保証金等は最低金額
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旅行業務取扱管理者の選任

営業所ごとに選任する

旅行業の営業を行う事務所には、旅行業務取扱管理者という国家試験に合格をした資格者を最低1人選任する必要があります。
複数の営業所を登録する場合には、営業所ごとに管理者を立てます。
この管理者を選任できない場合は、旅行業の登録をすることができません。
業務に従事する職員が10人以上の事務所の場合は、2人以上の旅行業務取扱管理者を選任する必要があります。

選任の意味

「選任」は、管理者として一定の業務について管理監督することが求められるため「常勤性」と「専任制」が要求されます。
そのため、1人の管理者が複数営業所の管理者として兼務することはできません
ただし、地域限定旅行業者とその代理業者については、一定の条件を満たすことで兼任することができます。

総合/国内/地域限定

旅行業務取扱管理者は、総合・国内・地域限定と3種類あります。
これは、旅行業の営業所でどのような旅行商品を取扱うかで変わってきます。
海外商品(企画旅行、手配旅行等いずれも)を取扱う場合には、必ず総合旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません。
海外商品を取扱わない場合は、総合管理者でも国内管理者でもOKです。
地域限定旅行業務しか取扱わない営業所では、地域限定管理者を選任することも可能です。

5年に1度の研修

選任された旅行業務取扱管理者は、5年に1度必ず定期研修を受けることとされています。
この研修を受けていない場合、登録拒否事由に該当するため、旅行業の登録を受けることができません
ですので、旅行業登録の更新手続を控えている旅行会社は、この研修を受けさせるようにしましょう。
なお、新規登録をする際に、選任管理者が定期研修を受講していない場合、旅行業登録後に研修を受講し、その後すみやかに受講を修了した旨を届け出る誓約書を提出すればOKです。

登録拒否事由

旅行業登録ができない11項目

下記の11項目に該当していると、旅行業の登録をすることができません。

  1. 旅行業等の登録を取消されて、取消しの日から5年を経過していない
  2. 禁固以上の刑、旅行業法違反による罰金の刑に処せられ、執行が終わって5年を経過していない
  3. 暴力団員でなくなった日から5年経過していない
  4. 申請前5年以内に旅行業務等に関して不正な行為をした
  5. 未成年者の法定代理人が①~④と⑦に該当する
  6. 心身の故障により業務を適正に遂行することができないまたは破産手続開始の決定を受けて復権をしていない
  7. 法人の役員が①~④と⑥に該当する
  8. 暴力団員等がその事業活動を支配している
  9. 営業所ごとに旅行業務取扱管理者を選任すると認められない
  10. 基準資産額を満たさない
  11. 旅行業者代理業を営もうとするもので、所属旅行会社が2以上であるもの

旅行業登録後に該当したパターン

旅行業の登録を受けた後に、②、③、⑤、⑥、⑦、⑧のいずれかに該当することになった場合、旅行業登録を取消対象となります。

旅行業務取扱管理者の場合

選任予定の旅行業務取扱管理者が、①、②、③、④、⑤、⑥のいずれかに該当している場合は、管理者として選任することができません。
他の人を探してくる必要があります。

また、管理者を選任した後に同じく①~⑥のいずれかに該当することになった場合についても、新しい旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません。

使用権原のある営業所

使用権原についての審査

旅行業法上は営業所についての明文規定はありませんが、登録行政庁によっては営業所について使用権原があることを条件としています。
例えば、東京都や埼玉県、神奈川県での旅行業登録は、申請時に使用権原を証明する書類の提出を求められます
また、山梨県でも、書類の提出を要求されるケースがありました。
あるいは、大阪府では旅行業の登録後に、営業所の付近図面や写真の提出をしなければならないので、これも一種の使用権原の確認だと思ってよいでしょう。

一方で、このような書類の提出を求めない登録行政庁であったとしても、営業所そのものには使用権原が無ければいけません。
自己所有しているとか、賃貸借契約を結んでいるとか、いずれかの方法できちんと自社で使用できる営業所を確保しておきましょう。

自己所有物件の使用権原の疎明方法

自己所有物件の場合は、建物の登記簿謄本を疎明資料として提出します。
この際に、旅行業登録の申請者の名義と、建物の所有者の名義が一致している必要があります。
建物の所有者の登記は義務ではないため、たとえば相続した物件などは名義が以前の所有者のままになっている場合もあります。
このような場合には、必ず所有者の名義を変更してから、旅行業の申請をしましょう。

賃貸物件の使用権原の疎明方法

賃貸物件の場合は、基本的には賃貸借契約書を提出します。
このときにも、旅行業登録の申請者名と、賃貸借契約書の賃借人の名義が一致している必要があります。
よくありがちなのが、新規で法人設立をした際に、契約書が代表者個人の名義になっていることです。
この場合、法人名義で契約書を巻き直すか、あるいは契約書の中に、物件のオーナーが法人設立後には法人名義で使用することを承諾する旨の記載を入れ込んでおく必要があります。
その他、契約期間が正当なものであるかどうか、使用用途が事務所として記載されているかどうか、等確認すべき項目は多岐にわたります。

レンタルオフィスやバーチャルオフィスで登録は可能?

法人設立当初は、初期費用を圧縮するため、事務所をレンタルオフィスやバーチャルオフィスにして登記をするケースも多いかと思います。
旅行業登録の手続上、注意すべきポイントがあります。

バーチャルオフィス

バーチャルオフィスでは旅行業の登録はできません
旅行業法上、営業所に旅行業登録票(標識)や料金表、旅行業約款の掲示義務があるため、物理的な執務室が無いバーチャルオフィスでは旅行業の登録はできません。
仮にバーチャルオフィスで登録できたとしても、上記の掲示義務がある書類を掲示できないため、旅行業法違反となり、登録の取消対象となります。

レンタルオフィス

レンタルオフィスの場合は、そのレンタルオフィスの形態によります。
標識等の掲示物の掲示義務があるため、ひとつ判断基準になるのは専用の執務スペースが確保できるかどうかです。
シェアオフィスのような、公共空間を多人数で共用するようなケースでは、旅行業登録は難しいでしょう。
一方で、専用の個室を使用するような形態では、旅行業登録については問題ないと判断される可能性が高いです。

旅行業の登録要件まとめ

基本条件はヒト・モノ・カネ

基準資産額と営業保証金は種別ごとに異なる

旅行業務取扱管理者は営業所ごとに常勤・専任

バーチャルオフィスでは旅行業の営業は不可

会社名にも気を付けよう

旅行業登録の要件について詳細に検討してきました。
もちろん、登録行政庁によって審査のポイントはさまざまですが、まずはこの記事で検討した内容を押さえていれば、最低限はOKです。
行政書士TLA観光法務オフィスでは、旅行業の登録手続についてのサポートを行っております。
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