【旅行業法】第8条ー営業保証金の額等

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旅行業法
第8条(営業保証金の額等)
旅行業者が供託すべき営業保証金の額は、当該旅行業者の前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引の額(当該旅行業者が第3条の登録を受けた事業年度に営業保証金を供託する場合その他の国土交通省令で定める場合にあっては、国土交通省令で定める額)に応じ、第4条第1項第3号の業務の範囲の別ごとに、旅行業務に関する旅行者との取引の実績及び旅行業務に関する取引における旅行業者の保護の必要性を考慮して国土交通省令で定めるところにより算定した額とする。

② 旅行業者は、前項の国土交通省令の改正があった場合において、その施行の際に供託している営業保証金の額が当該国土交通省令の改正により供託すべきこととなる営業保証金の額に不足することとなるときは、その不足額を追加して供託しなければならない。

③ 前条第2項、第4項及び第5項の規定は、前項の規定により営業保証金を供託する場合に準用する。この場合において、同条第4項中「旅行業の登録をした場合において、登録の通知を受けた日から14日以内」とあるのは、「次条第1項の国土交通省令の改正があった場合において、その施行の日から3ヶ月以内(その施行の日から3ヶ月を経過する日がその施行の日の属する事業年度の前事業年度の終了の翌日から100日を経過する日前である場合にあっては、当該100日を経過する日まで)」と読み替える。

④ 旅行業者は、第1項の国土交通省令の改正があった場合において、その施行の際に供託している営業保証金の額が当該国土交通省令の改正により供託すべきこととなる営業保証金の額を超えることとなるときは、その超える額の営業保証金を取戻すことができる。

⑤ 前項の規定による営業保証金の取戻しに関し必要な事項は、法務省令・国土交通省令で定める。

⑥ 営業保証金は、国土交通省令で定めるよころにより、国債証券、地方債証券その他の国土交通省令で定める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律(平成13年法律第75号)第278条第1以降に規定する振替債を含む。)をもって、これに充てることができる。

⑦ 営業保証金の供託は、旅行業者の主たる営業所の最寄の供託所にしなければならない。

旅行業法施行規則
第6条の2(旅行者との取引の額)
法第8条第1項の国土交通省令で定める場合は、次に掲げるものとする。
一 当該旅行業者が、新規登録又は変更登録を受けたことにより営業保証金を供託する場合
二 当該旅行業者が、前事業年度に法第7条第2項(法第9条第6項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の届出をした場合(前号に掲げる場合を除く。)
三 当該旅行業者の前事業年度が、1年と異なる期間であった場合(前2号に掲げる場合を除く。)

② 前項各号に掲げる場合について、法第8条第1項の国土交通省令で定める額は、それぞれ次の各号に掲げるものとする。
一 前項第1号に掲げる場合 新規登録又は変更登録の申請時に添付した書類に記載した年間取引見込額
二 前項第2号に掲げる場合 当該旅行業者の法第7条第2項の届出(当該旅行業者が新規登録又は変更登録の後に前事業年度に1回以上の変更登録を受けた者である場合は、直近の変更登録後のもの)後の前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引の額に365を乗じてこれを当該届出の日から前事業年度の終了の日までの日数で除して得た額
三 前項第3号に掲げる場合 当該旅行業者の前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引の額に365を乗じてこれを前事業年度の日数で除して得た額

第7条(営業保証金の額)
法第8条第1項に規定する営業保証金の額は、別表第1の額(旅行業者の登録業務範囲が第1種旅行業務である場合にあっては、別表第1の額に別表第2の額を加えた額)とする。

第8条(営業保証金又は弁済業務保証金に充てることができる有価証券)
法第8条第6項(法第47条第3項及び第48条第4項において準用する場合を含む。)の国土交通省令で定める有価証券は、次に掲げるものとする。
一 国債証券
二 地方債証券
三 特別の法律により法人が発行する債券
四 前3号に掲げるもののほか、担保附社債信託法(明治38年法律第52号)による担保附社債券及び法令により優先弁済を受ける権利を保証されている社債券(自己の社債券及び会社法(平成17年法律第86号)による特別清算開始の命令を受け、特別清算終結の決定の確定がない会社、破産法(平成16年法律第75号)による破産手続開始の決定を受け、破産手続終結の決定若しくは破産手続廃止の決定の確定がない会社、民事再生法(平成11年法律第225号)による再生手続開始の決定を受け、再生手続終結の決定若しくは再生手続廃止の決定の確定がない会社又は会社更生法(昭和27年法律第172号)による更生手続開始の決定を受け、更生手続終結の決定若しくは更生手続廃止の決定の確定がない会社が発行した社債券を除く。)

第9条(営業保証金又は弁済業務保証金に充てることができる有価証券の価額)
法第8条第6項(法第47条第3項及び第48条第4項において準用する場合を含む。)の規定により前条の有価証券を営業保証金又は弁済業務保証金に充てる場合における当該有価証券の価額は、次の各号に掲げる有価証券の区分に従い、当該各号に定める額とする。
一 国債証券、地方債証券又は政府がその債務につき保証契約をした有価証券 額面金額
二 前号の有価証券以外の有価証券 額面金額の100分の90

②割引の方法により発行した有価証券で供託の日から償還期限までの期間が5年を超えるものについては、その発行価額に次の算式により算出した額を加えた額を額面金額とみなして、前項の規定を適用する。

   額面金額ー発行価額
━━━━━━━━━━━━━━━ ×(発行の日から供託の日までの年数+4)
発行の日から償還の日までの年数

③前項の算式による計算において、発行の日から償還の日までの年数及び発行の日から供託の日までの年数について生じた1年未満の端数並びに額面金額と発行価額との差額を発行の日から償還の日までの年数で除した金額について生じた1円未満の端数は、切り捨てる。

営業保証金の算定基準の考え方

営業保証金の額の算定については、以下の考え方に基づいて、国土交通省令(旅行業法施行規則)で定められています。
①旅行業者の前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引額に対応すること
旅行業務の範囲ごとに定めること
③旅行業務に関する旅行者との取引の実情を考慮すること
④旅行業務に関する取引における旅行者の保護の必要性を考慮すること

営業保証金が担保するものは、旅行業者と旅行業務に関する取引を行い、旅行者が旅行業者に対して有する債権です。
この債権を保護するために旅行業者は営業保証金を供託する義務が定められています。
営業保証金が担保するものは「旅行者」の債権であるということがポイントです。
営業保証金の算定に旅行者との旅行業務に関する取引額を使用したり、旅行者との取引の実情や保護の必要性を考慮するのは、そういった理由からきています。

営業保証金制度はかつては営業所の数や取扱う旅行業務の内容に応じてその額が定められておりました。
しかし時代の変化とともに、旅行業の場合は営業所を増やさなくとも、委託販売を増やしたり、雑誌や広告等のメディアを活用した販売をすることにより、事業規模を拡大させることが可能となってきました。
そのような実情にあっては、営業所の数ではなく、実際の取引額をベースにして営業保証金の額を算出することが合理的であることから、1995年の法改正時に取引額を基準とした算定方法へと移行していきました。

なお、取引額の算定に当たっては、旅行業者代理業者が販売した所属旅行業者の旅行商品については、当該所属旅行業者にその契約効果が帰属するため、所属旅行業者の取引額として扱います
同様に、他の旅行会社に募集型企画旅行商品を委託販売させる場合、委託先旅行会社が販売した自社の募集型企画旅行商品は、自社の取引額として算定をします

営業保証金の額

営業保証金の額は、こうした考え方から、旅行業法施行規則の別表1において定められています。
以下はその抜粋です。

前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引の額 営業保証金の額
第1種旅行業 第2種旅行業 第3種旅行業 地域限定旅行業
400万円未満 7000万円 1100万円 300万円 15万円
400万円以上 5000万円未満 7000万円 1100万円 300万円 100万円
5000万円以上 2億円未満 7000万円 1100万円 300万円 300万円
2億円以上 4億円未満 7000万円 1100万円 450万円 450万円
4億円以上 7億円未満 7000万円 1100万円 750万円 750万円
7億円以上 10億円未満 7000万円 1300万円 900万円 900万円
70億円以上 80億円未満 8000万円 3000万円 2200万円 2200万円
1兆円以上 2兆円未満 45000万円 17000万円 12000万円 12000万円
2兆円以上1兆円につき 10000万円 3000万円 2500万円 2500万円

また、2018年1月に施行された改正法により、第1種旅行業者については、海外募集型企画旅行について一定水準以上の取引額がある場合は、さらに追加で営業保証金を上乗せして供託する必要があります
上乗せ額については以下の通りです。

前事業年度における旅行業務に関する旅行者との取引の額(海外募集型企画旅行に限る。) 営業保証金の額
8億円未満 0円
8億円以上 9億円未満 900万円
9億円以上 15億円未満 1100万円
15億円以上 35億円未満 1300万円
1000億円以上 2100億円未満 5000万円
2100億円以上1000億円につき 1100万円

前事業年度の取引額によらない場合の取扱い

営業保証金の算定方法は、前事業年度の旅行者との取引額を基準にしています。
この前事業年度は、ほとんど多くの事業者では1年間を1事業年度としています。
しかし、この方法により営業保証金を算出できない場合として下記の3つのケースが定められており、それぞれ営業保証金の算出方法が定められています。

新規登録・変更登録を受けて営業保証金を供託する場合

新規登録や変更登録を受けて新たに旅行業を始める場合、営業保証金の供託をして、その旨を登録行政庁に届け出るまでは営業を開始してはならないとされています。
したがって、このような場合には、登録申請時に提出した事業計画の、取引額の見込みを基準として供託すべき営業保証金の額を決定します

事業年度の途中で新規登録・変更登録を受けた事業者がその翌年の営業保証金の額を算出する場合

新規登録・変更登録を受けて営業保証金を供託した旨の届出をした事業年度は、年度の途中で旅行業を始めることになります。
この場合には、供託した旨の届出をした日から事業年度最終日までが旅行業務を行い得た期間となるため、その事業年度の取引額を、届出をした日から事業年度最終日までの日数で割ることで、1日あたりの取引額が算出できます
この1日あたりの取引額に365を掛けることで、1事業年度分の取引額として算出をして、営業保証金の額を決定します

            初年度の取引額
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ × 365
初年度に供託した旨の届出をした日から事業年度最終日までの日数

旅行業者の前事業年度が1年ではない場合

たとえば6ヶ月を一事業年度としているような会社がこれに該当します。
この場合は、前事業年度の取引額をその事業年度の日数で割り、1日あたりの取引額に365を掛けることで営業保証金の額の基準となる年間の取引額として換算します

前事業年度の取引額
━━━━━━━━━ × 365
前事業年度の日数

省令改正により営業保証金が増額又は減額した場合の取扱い

旅行業法施行規則の改正により、供託すべき営業保証金の額が増減した場合は、その時点で供託している金額と新たに供託しなければならない金額の差額を、追加で供託しなければなりません
また、供託すべき営業保証金の額が減少した場合は、その時点で供託している金額が供託すべき金額を超えている場合は、超過分について取り戻すことができます
増額した場合には義務的に追加で供託しなければならず、減額した場合には権利的に任意で取り戻すことができるだけ、という点には注意が必要です。

追加で供託する場合は、改正された施行規則が施行された日から3ヶ月以内に供託をして、追加で供託をした旨の届出を登録行政庁に行わなければなりません
なお、施行日から3ヶ月を経過する日が、旅行業者の事業年度が終了して100日を経過する日よりも前の場合は、通常通り100日以内に旅行業務に係る取引額の報告書を提出し、その取引額をもとに営業保証金を供託すればOKです。

有価証券による営業保証金の供託

供託をする際には、現金のほかに有価証券でも供託をすることが可能です。
有価証券で供託をする意味は、現金を供託する際には供託規則によって定められた利息が年間で0.0012%しかつかないところ、資金負担を軽減するために、既に所有している有価証券を供託するか、供託規則で定められた利息よりも高い利率の有価証券を購入して供託をした方が資金運用上有利になるためです。

有価証券を供託する場合には、国債や地方債、政府がその債務につき保証契約をした有価証券であれば証券の額面通りの価額を供託することができるが、それ以外の有価証券の場合は、額面の90%分の価額を供託したことになります。
その際、割引の方法で発行したもので、供託の日から償還期限まで5年を超えるものについては一定の計算式に当てはめて額面金額を算出するため、注意が必要です。

供託の管轄

営業保証金の供託は、旅行業者の主たる営業所の最寄りの供託所に行わなければなりません。
供託所は、供託法の規定により、法務局若しくは地方法務局若しくはその支局又は法務大臣の指定する出張所のことをいいます。
旅行業者の主たる営業所とは、登録申請時に登録事項として申請した主たる営業所のことをいいます。
供託法には、不動産登記や商業登記のような管轄についての一般的な規定が無いため、個別法の規定に基づいて供託を行う必要があります。
旅行業法では、主たる営業所の最寄の供託所を管轄供託所としています。

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