【旅行業法】第1条ー目的

【旅行業法】第1条ー目的
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第1条(目的)
この法律は、旅行業等を営む者について登録制度を実施し、あわせて旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、その組織する団体の適正な活動を促進することにより、旅行業務に関する取引の公正の維持旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的とする。

目的規定の意義

多くの法律では、その最初の条文に目的規定と言われるものが置かれています。
これは、その法律全体の方向性や考え方を表しています。
その法律がどういう経緯で作られたのかや、その法律を通してどんな社会を実現したいのか、どんな権利や利益を守りたいのか、そういったものを読み取ることができます。

また、法律には人が解釈をする余地があります。
時間の経過とともに、法律の制定当初は想定していなかったようなことも発生します。
そうしたときに、法律の内容を解釈する必要がでてきます。
解釈をするときに、その解釈の拠り所となるのが、各法律の目的規定なのです。

逆にいうと、各法律のその後の規定というのは、目的規定の理念に沿う形で置かれているということになります。

旅行業法の目的

旅行業法の目的は、3つです。

  1. 旅行業務に関する取引の公正の維持
  2. 旅行の安全の確保
  3. 旅行者の利便の増進

これはいずれも、1971年に旅行業法の前身である「旅行あつ旋業法」が改正され、現在の法律名に変わった際に加わったものです。
改正当時は「旅行業務に関する取引の公正の維持」ではなく「旅行業を営む者の行う取引の公正を確保し」という文言でした。
これが、1982年の旅行業法改正時に、現在の文言になりました。

それぞれの目的は独立して達成されるのではなく、渾然一体となって実現されるべきものです。
「旅行の安全」も「旅行者の利便の増進」も、旅行業者が扱う旅行業務が適切に行われてこそ達成できるものだからです。

この目的規定から見えてくる旅行業法の性質は、消費者保護です。
消費者とは旅行業者と取引を行う旅行者のことです。

旅行あつ旋業法が制定されたのは、戦後少し経った昭和27年です。
当時は悪徳なあっせん業者が増えており、不当な営業活動により旅行者が被害を被ることが懸念されていたため、このような悪徳業者を取り締まるために法律が制定されました。
そうした背景のもと、時代を経るごとに改正を繰り返して現在の形へとたどり着いたのです。

目的達成のための手段

先の3つの目的を達成するため、

  1. 旅行業等を営む者について登録制度を実施
  2. 旅行業を営む者の業務の適正な運営を確保する
  3. その組織する団体の適正な活動を促進する

という3つの手段にちても言及されています。

①の登録制度の実施については、旅行業者登録に当たって様々な要件を設定して参入障壁を設けて、要件に適合しない事業者をふるいにかけることによって、悪質な事業者による参入を未然に防ぐ効果が期待されます。
具体的には、登録手続についての規定や、営業保証金制度、基準資産額といった規定によって実現されています。

②の業務の適正な運営の確保については、旅行業者として登録した後も事業者としての質を担保するための措置と言えます。
例えば、旅行者との取引時に行う取引条件の説明や書面交付、契約締結後の書面交付、料金表や登録票の掲示義務といった様々な規制に関する規定が該当します。

③の組織する団体の適正な活動の促進については、業界の自浄作用や相互扶助の結果、旅行業界が健全に発展していくことを図るための措置です。
具体的には、JATAやANTAのような業界団体を組織し、そこに旅行業者が所属することにより、団体からのフォローアップや監督を受けるようになります。
他業種での同様の事例として、宅地建物取引業における保証協会、金融商品取引業における金融商品取引業協会などが挙げられます。

旅行業者「等」の扱い

目的規定において旅行業者「等」とあるのは、旅行業法上にはいくつかの業種区別があり、それらを全て含ませるためにそのような表現となっています。

具体的には旅行業旅行業者代理業旅行サービス手配業の3つの大きな枠があり、旅行業はさらに第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業の4つに細分化することが出来ます。
旅行業者代理業は1995年の旅行業法改正時に、旅行業の中にあった「旅行業代理店業」が削除され、改めて旅行業とは別の枠組みとして設けられた営業区別です。
また、旅行サービス手配業は2018年の法改正で新たに加わった枠組みです。

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