旅行業の登録種別と取り扱うことができる業務

旅行業の登録種別と取り扱うことができる業務
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旅行業法では、法律で規制する取引の内容や、その取引の内容に応じて必要な登録の種類について定められています。
実際に営業を始める際には、この点をしっかりと理解する必要があります。
そうでないと、ビジネスモデル上必要な営業ができない。
あるいはその種別の登録をしないでも本来は営業できる、といった齟齬が生じてきます。

今回は、旅行業法上の登録種別と取り扱うことができる業務の内容について、解説していきます。

この記事を読んで分かること

どのような営業の種類があるのか

営業の種類ごとにどんな業務を行うことができるのか

目次

旅行業の登録種別と旅行業務

旅行業法ではどのような業務を取り扱うかによって、登録すべき営業の種類が決められています。
営業の種類は大きく分けて、
①旅行業
②旅行業者代理業
③旅行サービス手配業
の3つがあります。

また、旅行業はさらに
Ⓐ第1種旅行業
Ⓑ第2種旅行業
Ⓒ第3種旅行業
Ⓓ地域限定旅行業
の4つに分類することができます。

以下、①Ⓐ~③の6つの登録種別と、旅行業法上の業務内容について説明をしていきます。

旅行業務の種類

募集型企画旅行

募集型企画旅行は、旅行業法の第2条第1項第1号で以下のように定められています。

旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(「運送等サービス」といいます。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為

また、標準旅行業約款では、

旅行者の募集のためにあらかじめ、旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービスの内容並びに旅行者が支払うべき旅行代金の額を定めた旅行に関する計画を作成し、これにより実施する旅行

と定められています。

ポイントは、4つです。
しかし、一番大事なのは2点目のあらかじめ計画を作成するという点です。

  1. 旅行に関する計画を
  2. あらかじめ作成して
  3. 計画実施に必要な契約を
  4. 自己の計算において締結する

一般的には、パッケージツアーと呼ばれているものがこれに該当します。
また、飛行機と宿泊施設だけが決まっているダイナミックパッケージと言われるタイプの旅行商品も、分類としてはこの募集型企画旅行に該当します。

自己の計算において、というのは包括料金で旅行代金を受け取ること、と置き換えていただけると分かりやすいかと思います。
たとえば、旅行会社がツアー造成のために旅館から10室分の在庫(空室)を買い取り、旅館の定めている宿泊料金とは関係なく、旅行会社の自由な値付けで、買い取った空室を埋め込んだツアーを販売する、ということになります。

ツアーが売れなければ買い取った空室分は基本的に旅行会社の損失となるため、「自己の計算」という表現になります。

受注型企画旅行

受注型企画旅行は、募集型企画旅行と同じ旅行業法の第2条第1項第1号で以下のように定められています。

旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(「運送等サービス」といいます。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為

また、標準旅行業約款では、

旅行者からの依頼により、旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービスの内容並びに旅行者が支払うべき旅行代金の額を定めた旅行に関する計画を作成し、これにより実施する旅行

と定められています。

ポイントは、4つです。
しかし、一番大事なのは2点目の旅行者から依頼を受けて計画を作成するという点です。

  1. 旅行に関する計画を
  2. 旅行者から依頼を受けて作成して
  3. 計画実施に必要な契約を
  4. 自己の計算において締結する

オーダーメイドツアーなどとも呼ばれます。
この旅行の代表的なものに、社員旅行や修学旅行などがあります。

手配旅行

手配旅行は、旅行業法第2条第1項第3号、第4号で以下のように定められています。

旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為

運送等サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為

また、標準旅行業約款では、手配旅行契約について

旅行者の委託により、旅行者のために代理、媒介又は取次をすること等により旅行者が運送・宿泊機関等の提供する運送、その他の旅行に関するサービスの提供を受けることができるように、手配することを引き受ける契約

と定められています。

ポイントは3つです。

  1. 旅行者からの依頼を受けて
  2. 運送、宿泊、その他の旅行に関するサービスについて
  3. 代理、媒介、取次をする

受注型企画旅行も手配旅行も、旅行者から依頼を受けて各種サービスを手配するという点では同じです。

企画旅行と手配旅行が異なる点としては、旅行会社が旅行者から料金を徴収する際は、宿泊施設や運送機関が定めるそれぞれの宿泊料、運送料の実費に加えて、旅行会社が別に定める旅行業務に関する取扱料金の内訳を明示する必要があるということです。

例えば、ネット上での航空券や高速バスの手配は、基本的にはこの手配旅行に分類されます。

受託販売

受託販売とは、募集型企画旅行商品を販売している旅行会社Aと、別の会社Bとの間で受託契約を結び、B会社がA会社に代わって参加者を募集し、その旅行商品の契約を締結する形式の業務です。

受託販売をする場合は、B会社でも旅行業の登録を受けるか、旅行業者代理業の登録を受ける必要があります。

旅行サービス手配業務

旅行サービス手配業務とは、旅行会社のために、旅行者に対する運送等サービスやその他の旅行に関するサービスの提供について、これらのサービスを提供する者との間で代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次をする業務のことをいいます(旅行業法第2条第6号、第7号)。

ポイントとしては、旅行会社のために、というところです。
業界的には、いわゆるランドオペレーター業務のことを、法律上は旅行サービス手配業務と呼んでいます。
もう少しかみ砕くと、旅行会社から依頼を受けて、宿泊施設や運送機関、その他の旅行サービスを下請け的に手配する事業者のことをランドオペレーターと呼びます。

旅行業法上は、宿泊・運送の手配に加えて、有償無資格通訳ガイド免税店の手配をする行為が旅行サービス手配業務であると定義されています。

渡航手続代行

渡航手続代行は、企画旅行や手配旅行の契約をした旅行者に対して、付随的に提供することができるサービスです。

標準旅行業約款では、

・旅券、査証、再入国許可及び各種証明書の取得に関する手続
・出入国手続書類の作成
・その他関連する業務

がその内容として定められています。

旅行相談

旅行業法第2条第1項第9号では、旅行に関する相談に応じる行為は旅行業務である、としています。

標準旅行業約款では、その内容をより具体化しています。

・旅行者が旅行の計画を作成するために必要な助言
・旅行の計画の作成
・旅行に必要な経費の見積り
・旅行地及び運送・宿泊機関等に関する情報提供
・その他旅行に必要な助言及び情報提供

こうしたことを報酬を得て対応する場合には、旅行相談業務として旅行業の業務範囲となります。

基本的旅行業務と付随的旅行業務

旅行業法上、旅行業務に分類される行為には、基本的旅行業務付随的旅行業務の2つに分解することができます。

基本的旅行業務は、前掲の企画旅行、手配旅行のことを指します。

付随的旅行業務とは、基本的旅行業務に付随して行われる行為のことを指します。
具体的には、宿泊・運送サービス以外の旅行に関するサービスについて行う行為や渡航手続代行が含まれます。

旅行相談に関しては、相談業務としてこれらとは別に独立して扱われます。

旅行業等の登録種別

旅行業法は、これまでに解説してきた業務について、どんなものを取り扱うかで登録すべき種類が決まります。
なるべく図表を使って、分かりやすくその違いについて説明したいと思います。

第1種旅行業

第1種旅行業は、旅行業法上の業務を全て取り扱うことができる、いわば旅行業の王様的存在です。
また、表にはありませんが、他の旅行会社と受託契約を締結すれば、他社商品の受託販売を行うことも可能です。

海外募集型企画旅行 国内募集型企画旅行 受注型
企画旅行
手配旅行 旅行サービス
手配業務
相談業務
第1種
旅行業

第2種旅行業

第2種旅行業は、海外募集型企画旅行のみ取り扱うことができません
ただし、第1種旅行業登録をしている会社と受託販売契約をすることで、受託契約をした会社の商品を受託販売することが可能です。

海外募集型企画旅行 国内募集型企画旅行 受注型
企画旅行
手配旅行 旅行サービス
手配業務
相談業務
第2種
旅行業
受託販売
のみ可能

第3種旅行業

第3種旅行業は、基本的に募集型企画旅行を取り扱うことはできません。
しかし、国内募集型企画旅行に限っては、拠点区域の範囲内に限って、自社でも企画・実施することが可能です。
拠点区域とは、営業所のある市町村とその隣接市町村観光庁長官の定める区域のことを指します。
観光庁長官の定める区域については、こちらの記事をご参照ください。

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拠点区域以外の国内募集型企画旅行や、海外募集型企画旅行は、受託販売であれば取り扱うことが可能です。

海外募集型企画旅行 国内募集型企画旅行 受注型
企画旅行
手配旅行 旅行サービス
手配業務
相談業務
第3種
旅行業
受託販売
のみ可能

※1
※1…拠点区域のみ可能。拠点区域外は、受託販売なら可能。

地域限定旅行業

地域限定旅行業は、旅行業の種別の中でも一番業務範囲が制限されています。
海外募集型企画旅行は受託販売のみです。
その他の企画旅行、手配旅行、旅行サービス手配業務については、拠点区域のみで取り扱うことが可能です。
もちろん、受託販売であれば拠点区域外でも取り扱うことが可能です。

旅行サービス手配業務を拠点区域外でも実施する場合には、別途旅行サービス手配業の登録を受ける必要があります。

海外募集型企画旅行 国内募集型企画旅行 受注型
企画旅行
手配旅行 旅行サービス
手配業務
相談業務
地域限定
旅行業
受託販売
のみ可能

※1

※1

※1

※2
※1…拠点区域のみ可能。拠点区域外は受託販売なら可能。
※2…拠点区域のみ可能。拠点区域外は旅行サービス手配業の登録が必要。

旅行業者代理業

旅行業者代理業は、旅行業者との間で受託契約を結んで、その旅行業者の商品だけを代理で販売することができます。
かんたんに言うと受託販売専用の営業種別です。

受託契約を結ぶことができるは、特定の旅行会社1社だけとなっていて、この旅行会社のことを所属旅行業者と呼びます。
所属旅行業者が他のX旅行会社と受託契約を結び、その受託契約の中にX社の商品を旅行業者代理業者に取扱わせる旨の合意がある場合、所属旅行業者以外の受託販売も行うことができます。

また、旅行業者代理業者は、所属旅行業者のためであれば旅行サービス手配業務を行うことも出来ますが、所属旅行業者以外のために業務を行う場合には、別途旅行サービス手配業の登録を受ける必要があります。

海外募集型企画旅行 国内募集型企画旅行 受注型
企画旅行
手配旅行 旅行サービス
手配業務
相談業務
旅行業者
代理業
所属旅行業者のみ可能 所属旅行業者のみ可能 所属旅行業者のみ可能 所属旅行業者のみ可能 △※3 ×
※3…所属旅行業者のみ可能。所属旅行業者以外の手配は旅行サービス手配業の登録が必要。

旅行サービス手配業

旅行サービス手配業は、旅行会社のために運送・宿泊サービス、有償無資格通訳ガイド、免税店の手配を行う業態です。

旅行業法の規制対象になるのは国内に関する手配のみで、国外の各種サービス手配は規制対象外です。
また、旅行会社のために行う手配が規制対象なので、旅行者との直接取引をするためには旅行業の登録が必要です。

海外募集型企画旅行 国内募集型企画旅行 受注型
企画旅行
手配旅行 旅行サービス
手配業務
相談業務
旅行サービス手配業 × × × × ×
※3…所属旅行業者のみ可能。所属旅行業者以外の手配は旅行サービス手配業の登録が必要。

まとめ

ここまで解説してきたものを表にすると、下記のようになります。

海外募集型企画旅行 国内募集型企画旅行 受注型
企画旅行
手配旅行 旅行サービス
手配業務
相談業務
第1種
旅行業
第2種
旅行業
受託販売
のみ可能
第3種
旅行業
受託販売
のみ可能

※1
地域限定
旅行業
受託販売
のみ可能

※1

※1

※1

※2
旅行業者
代理業
所属旅行業者のみ可能 所属旅行業者のみ可能 所属旅行業者のみ可能 所属旅行業者のみ可能
※3
×
旅行サービス手配業 × × × × ×
※1…拠点区域のみ可能。拠点区域外は受託販売なら可能。
※2…拠点区域のみ可能。拠点区域外は旅行サービス手配業の登録が必要。
※3…所属旅行業者のみ可能。所属旅行業者以外の手配は旅行サービス手配業の登録が必要。

 

これから旅行業を始めようとする場合には、自分が行いたいものがどんな区分に該当するのか、ぜひ確認してみてください。
行政書士TLA観光法務オフィスでは、どのような営業区分にするのが適切なのか、お話を伺いながらご提案することも可能でございます。

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