旅行業Q&A

旅行の相談対応をするだけでも旅行業登録が必要なのか

旅行の相談対応をするだけでも旅行業登録が必要なのか

最近、当事務所には

旅行に関する相談対応を有料で受けるだけでも旅行業登録が必要なのか

という趣旨のお問い合わせをいただくことがございます。

今回は、このご質問に対して、旅行業法上どのような扱いになるのかを、解説いたします。

旅行相談とは

まず、旅行業法を確認すると、旅行業に該当する行為のひとつとして法第2条第1項第9号に

旅行に関する相談に応じる行為

という内容が規定されています。
報酬を得て一定の行為を行うことが旅行業なので、お客様から相談料をいただいて旅行に関する相談に応じる行為をすることは、旅行業に該当し、都道府県知事や観光庁長官の登録を受ける必要があります

しかし、これだけだと、あまりに味気なさ過ぎて、そしてあまりにも当たり前すぎて、結局「旅行相談」が何なのかよく分かりません。

そこで、標準旅行業約款を確認してみると、「旅行相談契約の部」というものがあるので、さらにその中身を見ていきます。
すると、旅行相談契約の部第2条では、次のように定義されています。

 この約款で「旅行相談契約」とは、当社が相談に対する旅行業務取扱料金…を収受することを約して、旅行者の委託により、次に掲げる業務を行うことを引き受ける契約をいいます。
一 旅行者が旅行の計画を作成するために必要な助言
二 旅行の計画の作成
三 旅行に必要な経費の見積り
四 旅行地及び運送・宿泊機関に関する情報提供
五 その他旅行に必要な助言及び情報提供

標準旅行業約款は観光庁長官(と消費者庁長官)が共同して作成したもので、本来は旅行業者が個別に旅行者との旅行契約に際して用いる旅行業約款の認可を受けなければいけないところ、この標準旅行業約款を利用する場合は認可を受けたものとして扱われるため、この旅行相談契約の部に記載された旅行相談に関する業務内容の定義が、実質的には「旅行相談」の中身となります。

旅行相談に該当する範囲

相談内容も色々ある

定義が理解できたとしても、いざ実務に落とし込もうとすると、どの範囲までがその定義に含まれるのか、悩むことも多くあります。

旅行相談について考えてみると、

  1. 旅行先へ向かうための移動手段に関する相談
  2. 旅行先での宿泊場所に関する相談
  3. 旅行先の観光スポットに関する相談
  4. 旅行先のおすすめレストランや土産物に関する相談

といったものが考えられます。
どうやって行くのか、どこに泊まるのかというのは大事ですが、それ以上に、旅行先で何を見るのかどんなものを食べるのか、といった点を気にするお客様が大半ではないでしょうか。

そうすると、これらの全てのが旅行業登録の必要な旅行相談に該当するのか、という範囲の確定が大事になってきます。

基本的旅行業務と付随的旅行業務

旅行業法には、基本的旅行業務付随的旅行業務という考え方があります。

基本的旅行業務とは、運送機関が提供する運送サービスと宿泊機関が提供する宿泊サービスに関して、①旅行者のために旅行の計画を作成してその実現のために必要な契約を行ったり、②旅行者からの依頼を受けてこれらの運送・宿泊サービスの手配を行ったりする行為のことを言います。

付随的旅行業務とは、上記の基本的旅行業務に付随して運送・宿泊サービス以外の旅行サービス(例えばレストラン、観光施設、土産物店等)に関して、前掲の①のような旅行の計画作成とその実現に必要な契約行為や、②のような手配をする行為のことを言います。

法律上の言い回しなので少しとっつきにくいですが、さらにかみ砕けば

基本的旅行業務
⇒バス・飛行機・新幹線等の運送機関とホテル・旅館等の宿泊機関に関する業務

付随的旅行業務
⇒運送・宿泊に付随するレストラン、観光施設、土産物、ガイド等の周辺サービスに関する業務

という整理ができます。

付随的旅行業務も旅行相談に含まれるのか

旅行相談については、旅行業法上では
「旅行に関する相談に応じる行為」
とだけ書かれていました。

標準旅行業約款の旅行相談契約の部では、もう少し具体化されて
「旅行計画の作成に必要な助言」
「旅行計画の作成、経費の見積り」
「旅行地や運送・宿泊機関等その他旅行に必要な情報提供」
と書かれていました。

お客様に代わって旅行計画を作成する場合や、お客様が旅行計画を作成する上でのアドバイス、そして旅行地等に関する必要な情報提供に関して、前述の基本的旅行業務であれば旅行業法上の旅行相談に該当する、というのはご理解いただきやすいと思います。

それでは、運送や宿泊サービス以外の付随的旅行業務に関する相談については、旅行業法に該当するのでしょうか

実は、これについては明確な行政としての見解は出されておりません。
しかし、旅行業法の趣旨などを鑑みると、付随的旅行業務に関する相談についても、旅行業法上の旅行相談に該当すると考えるのが自然でしょう。

旅行業法は、第1条で「旅行業務に関する取引の公正の維持旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的とする」としています。

また、旅行業法第13条第1項第2号では、旅行業者がしてはならない禁止行為として、
旅行業務に関し取引をする者に対し、その取引に関する重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
ということも定められています。
これを、前者を事実不告知、後者を不実告知の禁止と言います。

たとえば、仮に付随的旅行業務に関する旅行相談が旅行業務に該当しないとすると、旅行業登録を受けていない無登録事業者が、付随的旅行業務に関する旅行相談を有償サービスとして提供することできるようになります。
このときに、無登録事業者が旅行相談について事実不告知や不実告知をしたとしても、付随的旅行業務に関する旅行相談は旅行業務に該当しないため、旅行業法第13条第1項第号の禁止行為には該当しない、ということになります。
当然、旅行業登録の必要ない業務ということになりますから、旅行業法上禁止されている無登録営業ということにも当てはまりません。
そうすると、意図的にこのような事実不告知・不実告知行為を行う無登録事業者を規制できないことになり、それは旅行業法が目的としている、①取引の公正の維持、②旅行の安全の確保、③旅行者の利便の増進を図ることにはつながらず、旅行業法の趣旨にそぐわない、という結論につながります。

事例を出してみると、海外の悪質なレストランや土産物店から手数料を受け取ることを約束している無登録事業者が、現地のおすすめレストランや土産物店を旅行者から聞かれて、当該レストランや土産物店を推奨した結果、旅行者が現地で当該レストラン等を利用して不当に高い金額を請求されてしまった、というような場合に、レストランや土産物店に関する旅行相談は付随的旅行業務に分類されるところ、付随的旅行業務に関する旅行相談も旅行業法上の規制が及ぶとすれば、こうした無登録事業者を旅行業法違反として処分することが可能になります。

金銭的な損害だけでなく、犯罪や事故に巻き込まれるなどして身体・生命に危機が及ぶとなると、ことさらに旅行者の保護を図る必要も出てきます。

こうしたことからも、付随的旅行業務に関する旅行相談も、旅行業法の規制が及ぶと考えるべきです。

もちろん、旅行業法上、付随的旅行業務は基本的旅行業務に付随して行われる場合に限って旅行業務となりえる、というのが本来の解釈であるため、旅行相談についても、単独で付随的旅行業務に関して行われる相談は除外すべき、という指摘もあろうかと思います。
この点については、先にも述べたように必ずしも行政見解としては明確になっているものでもないので、旅行業法施行要領の改正等を通じて、一定の解釈基準が示される必要があるでしょう。

なお、本記事は観光庁旅行振興担当参事官室の方と雑談ベースで照会した内容を踏まえて、当事務所の見解として記載をしております。
個別具体的な見解については、適宜観光庁の担当部署に照会していただければと思います。

観光庁への照会に当たり、意見書等の作成や情報整理が必要な場合、当事務所でもそのようなお手伝いが可能でございますので、必要に応じてお声がけをいただければ幸いです。
そうしたサポートが必要な場合は、お問い合わせフォームよりご相談くださいませ。
あなたからのご連絡をお待ちしております。

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