旅行業の基準資産額 計算に必要な勘定科目についての解説

旅行業の基準資産額 計算に必要な勘定科目についての解説
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旅行業の登録を受けるためには、基準資産額を満たしているかどうかの算定が必要です。
特に、決算を迎えた既存会社の場合は、基準資産額を計算する上での基礎資料となる貸借対照表に、様々な勘定科目が記載されているはずです。
旅行業登録の審査手続では、勘定科目の内容によっては詳細な内訳や精算状況を確認されるため、経営者自身が数字をきちんと把握しておくことが重要です。

この記事では、基準資産額の算定に必要な勘定科目について、詳細にその性質などを検討しております。

また、基準資産額の確認方法については別の記事で詳細に解説をしています。

この記事の想定読者

  • 旅行会社の経営者や経理担当者の方
  • 旅行会社をクライアントととして抱える弁護士・税理士の方
目次

考察が必要な理由

旅行業登録に必要な基準資産額の考え方はいたってシンプルです。
それは、社内に現金化可能な資産がどれくらいあるのか、ということです。

基準資産額を算定するための基礎資料は、決算書類のうち貸借対照表です。
決算書類は、会計上のルールに従って、税務的な観点も取り入れながら作成します。
あなたの会社に顧問税理士がついているのであれば、間違いありません。
しかし、信頼できる顧問税理士も、あくまで税務のスペシャリストです。

旅行業登録という許認可分野についてもきちんと把握されていらっしゃれば問題ありませんが、やはり畑違いということもあります。
会計的にも税務的にも全く問題は無いし、むしろそのように経理処理する方が会社にとってメリットがある場合であっても、許認可の維持という観点では不適切になる場合も十分にあり得ます。

会計×税務の観点に許認可維持という視点を加えて、太く長く事業を継続していくために、少しでも参考になればと思い、いくつかの勘定科目について許認可の審査実務の観点から考察を加えていきます。

各勘定科目についての考察

流動資産で不良債権化しているもの

売掛金

まず、1年以上回収できていない売掛金は不良債権として見られて、資産の総額から控除される可能性が高いです。
仮に1年以上回収できていないとしても、近いうちに確実に回収する旨の約束を相手方としている場合は、その内容が分かる書類を提出する必要があるでしょう。

また、債権の発生原因や発生日、相手方の名称が不明なものも回収可能性が無い不良債権としてみられて、資産の総額から控除されるでしょう。

立替金、未収入金

立替金についても、売掛金と同じような論点です。
長期に渡って回収できていないものは、今後も回収できないものとして資産の総額から控除される可能性が高いです。

この後の貸付金でも出てくる論点ですが、会社の役員に対して発生している立替金等がある場合は注意が必要です。
中小企業の会計は、役員(特に代表者)個人の財布と会社の会計が明確に区別できていないとして見られがちなので、役員に対する立替金が計上されているような場合には、資産の総額から控除される可能性が高いです。
立替金が発生した原因について書面で証拠を残したり、立替金の清算期日について確約書面を作成するといった対応を求められることもあるでしょう。

貸付金

貸付金が未回収の場合、貸付契約書(金銭消費貸借契約書)の有無が重要です。
特に役員貸付金を計上しているような場合、会社から役員に対して貸付契約書を作成していることはほとんど無いため、基準資産額の計算時に資産の総額から貸付金が控除されてしまいます。

差入保証金

差入保証金は貸借対照表上「投資その他の資産」として扱われています。
この勘定科目に計上されるものについてはいくつか種類がありますが、基準資産額の基本である現金化可能かどうかが判断のポイントになります。

例えば賃貸物件の敷金については差入保証金として計上されることが多いですが、賃貸物件を解約した際に返金されるものであれば、資産の総額として計上可能です。
一方で、返金されない敷金というものがあれば、それは資産の総額としては控除されます。
※そもそも、返金されない敷金は差入保証金には計上されないと思いますが、考え方の練習です。

また、ゴルフ会員権が差入保証金として計上されている場合も注意が必要です。
会計上、資産として計上されていても、例えばゴルフ場が破綻をしていてゴルフ会員権の払戻しが受けられないというようなことがあれば、当然現金化不可能な訳ですから、資産の総額からは控除されます。

長期前払費用

長期前払費用は、あるサービスについて費用を前払しているものの、まだサービス提供期間が経過していないもので前払の期間が1年以上に渡るものをいいます。
たとえば、火災保険自動車保険の保険料を2年分前払したような場合に計上される勘定科目です。

これらの勘定科目についても、たとえば火災保険や自動車保険を中途解約して、その保険料が日割りで返還されるということであれば「現金化可能な資産」となるので、基準資産額を計算する際の資産の総額に含めてよいことになります。

繰延資産

繰延資産は、会計上は資産として扱われていますが、実態としては既に支払った費用であり、一定期間を経て償却していくものであるため、「現金化可能な資産」という観点でいえば一切の価値がないことになります。

ですので、繰延資産として計上されているものは、全額資産の総額から控除されます。

なお、会計上の繰延資産は、創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債等発行費の5つに細分できますが、この5つに該当しないものでも一定の場合には単純に繰延資産として計上されます。

営業権

営業権はのれんとも言い、簡単に言えば、企業買収(M&A)で発生した純資産以上の価値の上乗せ分です。
営業権として計上されていることもあれば、のれんとして計上されていることもあると思います。
いずれにせよ、こののれんは現金化することが出来ない無形の財産価値なので、資産の総額からは控除されます。

基準資産額は現金化可能かで考える

会計上は様々な勘定科目が存在するため、全てを詳細に解説するのは現実的ではありません。
ですが、基準資産額を考えるときにはまず「現金化できるのか?」という視点を持つことが重要です。
審査担当者への補足説明をする際も、この視点で立証をしていくことになります。

なお、会計・税務上の専門的な部分については顧問税理士にお聞きいただければと思います。
その他、実務上は行政の担当により判断ポイントに幅があるため、手続を進める前に事前に財務諸表や申告書類を持参して事前相談に行くことも有用です。

基準資産額算定のための勘定科目の考え方まとめ

  • 基準資産額=現金化可能な社内資産という考え方
  • 繰延資産や営業権(のれん)は全額控除
  • 売掛金や立替金は未回収期間が長期化していないかチェック
  • 貸付金は契約書必須!役員貸付金は特に注意が必要

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行政書士TLA観光法務オフィスでは、旅行業の新規・登録種別の変更・登録期間の更新準備を進めている旅行会社さまの基準資産額のチェックを行っております。
手続直前になって慌てることの無いように、日ごろからきちんとご準備をしていただきたいと考えております。

この記事を読んでいただき、基準資産額を満たしているかどうか心配、基準資産額のチェックをしてほしいとお考えの場合は、 下記お問い合わせフォームからご連絡いただければ幸いです。
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