更新登録時の旅行業法の弾力的な運用
令和2年3月27日付で、観光庁参事官から、以下の通達が発出されました。
新型コロナウイルスの影響を受けた旅行業者に対する旅行業法に係る関係事務の取扱いについて(観参第1194号)
この通達では、旅行業者の更新登録の申請時における旅行業法の適用について弾力的な運用をするように、という内容のことが書かれています。
具体的な対応内容については、以下の2つです。
更新登録の申請書類について
旅行会社が旅行業の登録を継続するために5年に1度しなければならない更新登録の申請手続について、有効期間の満了する2か月前までには書類を提出しなければならないとされています(旅行業法施行規則第1条の2)。
このときに、以下のような運用をしている登録行政庁もあります。
・提出した書類に不備や添付漏れがあると一切受け付けしない
・書類の提出期限である登録期間満了日の2か月前を過ぎたら一切受け付けしない
今回の通達では、仮に申請した書類に不備があったとしても申請を受け付けし、審査をしていく過程で適宜書類の修正や追加提出を求めるようにすること、とされています。
当たり前のようにも思えることですが、上記事例のように一切受け付けしない登録行政庁があることを考えると、この措置は非常に大きい運用となっております。
更新時の基準資産額について
基準資産額については、各旅行業の登録種別ごとに決められている金額を上回っていることが、更新の絶対条件です。
基準資産額を満たしているかどうかの判断は、直前決算期の確定申告書と決算書を使って行います。
新型コロナウイルスの影響で観光業界は大きくダメージを受けており、コロナ禍に入ってから決算を迎え、かつ更新手続も行うような場合、基準資産額を満たさなくなってしまうという可能性が十分にあります。
そこで、令和2年(2020年)2月以降の決算書類で基準資産額を下回っており、その原因が新型コロナウイルスの影響であると認められる場合には、その事業年度の前年の決算書類を基にして、基準資産額を算定するといった方法で対応しても問題ない、という内容が出されています。
(2022年1月21日追記)
令和3年6月15日観光庁参事官通知(観参第155号)で、令和4年3月までに更新登録の申請期限を迎える旅行会社については、基準資産額を算定する決算書類を新型コロナウイルス感染症の拡大前に確定した直近の決算書(おおむね令和2年1月以前に確定したもの)とすることも可能とされています。
令和4年3月までに申請期限を迎える旅行会社は、前年の決算書類について既に新型コロナウイルス感染症の影響を受けていることを配慮した措置となっています。
もちろん2か年続けで基準資産額を下回っている場合は、更新は厳しいと思いますが、これまで順調に事業を行ってきた旅行会社にとっては、一定の救済策になるでしょう。
取扱い期間について
上記の弾力的な取扱いについては、令和3年3月の更新登録の申請分までとする、とされています。
令和2年12月4日観光庁参事官通知(観参第918号)において、令和4年3月までに登録の有効期間が満了する旅行会社の更新登録申請について、同様に取り扱うというされました。
(2022年1月21日追記)
その後発出された令和3年12月16日観光庁参事官通知(観参第555号)で、 令和3年6月15日観光庁参事官通知(観参第155号) の措置(基準資産額を算定する決算書類をおおむね令和2年1月以前に確定したものでも良いとする措置)については、令和5年3月までに更新登録の申請期限を迎える旅行会社の更新登録の申請分まで同様に取り扱うこととなりました。
なお、「仮に申請した書類に不備があったとしても申請を受け付けし、審査をしていく過程で適宜書類の修正や追加提出を求めるようにすること」とする運用については、令和3年12月16日観光庁参事官通知(観参第555号)の通達では言及されていないことから、令和2年12月4日観光庁参事官通知(観参第918号)の内容どおり、令和4年3月の更新登録申請分までと思われます。
個人的な提言(2020年5月20日時点)
今般の新型コロナウイルスの影響により、観光業界、特に旅行会社は大きな影響を受けました。
各国で感染症対策をしていく中で、不要な外出は制限され、とても観光旅行を実施できる状況ではありません。
海外はおろか、国内旅行ですら厳しい状態です。
また、この影響がいつまで続くのかも先が見通しにくい中で、旅行会社各社は収益をあげることも容易ではありません。
企業存続の方針として融資政策の緩和が行われていますが、どれだけ融資を受けたとしても、貸借対照表上は現金が増えた分と同じだけ負債として計上する必要があり、基準資産の算定には大きな影を落とします。
もちろん今回通達で出された特例措置は旅行会社の登録を存続するために一定の効果があるものと思われます。
しかしそれだけではなく、例えば令和3年3月までに有効期限を迎える旅行会社に対して、一律1年間の期限猶予をするというような思い切った措置も必要であると考えます。
今回のコロナ禍は、観光立国を推進する我が国において非常に大きなインパクトがあり、その観光立国推進の中心的役割を担う旅行会社の存続危機という形で影響を及ぼしております。
今後のコロナ禍収束後に、観光産業が焼け野原とならないためにも、ありとあらゆる措置を模索し、講じていただきたいと考えます。
行政書士TLA観光法務オフィスでは、新型コロナウイルスによる影響を受けた旅行会社さまのため、更新登録の手続サポートや、その他資金繰り・融資・補助金等のサポートもさせていただいております。
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